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テキはトモダチ
15. あいつらの目的 〜赤城〜
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えした。

「それって、自分の目で見た? 深海棲艦が先に手を出したその瞬間は見たの?」
「……いえ、私はこの鎮守府が出来てすぐの時に建造されたので、その頃にはまだ生まれていませんから……」
「じゃあ、それを示す一次資料を見たことは?」
「いえ……ですが大本営の発表では……」
「大本営の発表の裏取りはした? その確証は?」
「そもそも資源を運ぶシーレーンはすべて敵勢力に落ちたと……」
「その割には輸出入の被害も出ていないし資材確保の遠征任務も毎度成功してる。これに対してはどう説明する?」

 私の中途半端な反論に対し、容赦ない追撃を浴びせてくる提督。この提督がここまで饒舌になるのも珍しい。なにやら責められているようで気分は良くないけれど……

「……提督」
「……あ、すまん」
「謝る相手が違いますよ」

 この異様な状況を見かねてか、大淀さんがキーボードを叩きながら提督を静かに諌めた。確かにいい気分はしてないが……こんな提督を見たのは初めてだ。

「すまん赤城。別にお前さんを責めたりしているわけではないんだが……」
「分かってますよ。でも珍しいですね。提督がこんな風に饒舌になるなんて」

 提督は苦笑いを浮かべながら頭をポリポリと掻いていた。さっきまでよほど興奮していたようで、少しだけ顔が赤くなっている。いつもは死んだ魚の目で血色もいい方ではないのだが……今日の提督はなんだか目に力もあるし、血色もいい。こんなに覇気のある提督を見るのは初めてな気がする。

 だからこそ気になる。もし提督が考えていることが本当だとしたら……この戦いが、深海棲艦から制海権を取り戻すための戦いではないのだとしたら……私達が深海棲艦を侵略している立場なのだとしたら……私達は何の為に生まれてきたんだろう……このままでは、自分の存在に自信が持てなくなる。

「……提督」
「ん?」
「今の話が本当だとして」
「うん」
「……私達は、何のために生まれてきたんでしょうか?」

 自分の手の中にある湯呑みに視線を落としながら、つい口に出してしまった。私の視界には、湯呑みの奥底に沈み込んだお茶っ葉が見えている。大淀さんが淹れたお茶は少し濃い目で、お茶っ葉はお茶の深緑にまぎれてとても見えづらい。

「……それはね赤城」
「はい」

 少しの間を置いて、提督は口を開いた。いつものように優しく当たりの柔らかい声ではあったが、いつものような覇気のない声ではない。その言葉には、いつもは込められてないように感じる提督の気持ちがこもっているように感じた。

「ゆっくり時間をかけて、自分で見出すものよ?」
「そうでしょうか……」
「そもそもね。生きてることに意味なんてないのよ。もしあるとすれば、生きてることそれ自体に意味があるのよ」

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