15. あいつらの目的 〜赤城〜
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……なるほど、少しだが提督が言いたいことが読めてきた。
「……深海棲艦は、こちらに対して手加減している?」
「うん。そう思うよね」
「本当は一撃でこちらを撃沈出来るだけの力があっても、わざと大破判定の損傷で済ませているということですか?」
「あくまでこの資料から見るには……だけどね」
大淀さんが『お茶淹れましょうか』と言い、提督が『お願い』と大淀さんに伝えていた。執務室内に立ち込める緑茶のよい香り。大淀さんから湯呑みを受け取り、お茶を少しいただいた。不快感と疑問で混乱している頭を、大淀さんのお茶は少しだけ落ち着けてくれた。
緑茶をすすりながら考える。深海棲艦が手加減していた……もしこれが本当だとして、その理由は何だ? 私達を舐めてかかっている? ……いや違う。開戦してから560万人もの味方を殺されているのに、私達を過小評価するはずがない。ならば理由は何だろう。
「提督」
「ん?」
「提督も、深海棲艦は私達に対して手加減していると、本心から思ってますか?」
「うん」
「なら、その理由は何だと思いますか?」
「ふむ……」
この死んだ魚の眼差しをしている男は、きっと何か考えがあるはずだ。いつになく熱を帯びた物言いで話をする提督に対し、私はそう思い始めていた。
「……笑うなよ?」
「笑いませんよ」
「今のお前さんたちと一緒で、本当は戦いたくないのかなーって俺は思ってる」
提督の答えは、意外なほどシンプルなものだった。
「……え、ちょ……本気ですか?」
「うん。百歩譲って、殺したくないのかなーって」
「じ、じゃあなんで、こんな戦争状態になってるんですか?」
「あいつらからしたら、降りかかる火の粉を払ってるだけなんじゃない? 大破してなお進軍してくるヤツは、仕方なく撃沈してるだけなのかも」
私達が火の粉?
「え……つまり提督は、私たちが深海棲艦の勢力に攻め込んでいるから、戦闘が起こってると言いたいんですか?」
「証拠はないけどね。今見せた資料から考えると、そんな感じなのかもなぁと」
「でもそれは……元々この戦争は、深海棲艦に制海権を奪われたのが発端のはずです。奪われた海域と制海権を取り戻すための戦いだと聞いています」
「そう聞いてるねぇ」
「では、最初に攻めてきたのは深海棲艦の方では……?」
そうだ。私達人間サイドは深海棲艦にある日突然攻め込まれ、制海権を失ったと聞く。そのため、深海棲艦に対抗しうる手段として私達艦娘が開発されたと聞いた。
もし提督が言ってることが本当なのだとしたら、これはどう説明する? なぜ自分たちから侵略を仕掛けておいて、いざ抵抗されるとそのような事を言う? それはおかしい。
だが、提督は冷静に……いや冷酷に私にこう切り替
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