15. あいつらの目的 〜赤城〜
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資料は、俺が作った薄い本のゲラだ。そう思って読んでちょうだい」
「薄い本?」
「そこは食いつかなくていいの。とにかく、他の子にはまだ秘密にしとくんだよ?」
秘密ならはじめからそう言えばいいだろう……と心の中で悪態をついている私に、印刷された数枚の書類が大淀さんから渡された。
『轟沈の統計とその原因及びシチュエーション分析』
渡された書類の一枚目には、そう書かれていた。
「提督、これは?」
「まぁ目を通してごらん?」
提督に促され、渡された書類にザッと目を通してみた。深海棲艦との戦いが始まってから今日までの、約3年半の間に轟沈した艦娘の記録のようだった。
「提督……あまり気の進む内容ではないのですが……」
「何もじっくり読まなくていいのよ……」
表記が一番淡々としている統計部分を見る。艦娘の轟沈数は263人……それだけの人数の仲間の命が奪われたのか……。
「轟沈数の項目は見た?」
「はい。これだけたくさんの仲間の命が失われたのかと思うと残念で……」
「……それだけ?」
「それだけとは?」
「3年半も戦争をしているのに、少なすぎると思わない?」
人数の大小で悲しみや無念を測るべきではない……と私は思ったのだが、提督の意図はどうやらそこではないらしい。同じ項目にある、深海棲艦の轟沈数を見てみる。こちらは正式な数字は出ておらず、概数での表示となっているが……
「深海棲艦側の轟沈……私達から見れば撃沈ですが……約……560万ですか……」
「うん」
淡々としてなどいない……いや数字そのものは事実を淡々と伝えているが……私達が殺した深海棲艦は総勢約560万人……子鬼さんや集積地さんと仲良くなってしまった今、この数字を聞いて衝撃を受けない子はこの鎮守府の中にはいないだろう……。
「……提督、これはみんなには見せないほうがよろしいかと」
「うん。俺もそう思うよ。でも問題はそこじゃない。こちらの轟沈が少なすぎる」
確かに深海棲艦側の轟沈数と比較すると微々たる数だが、それは相対的な話だ。こちら人間側で263人の尊い犠牲が出ている事実は変わらず、その重大性も変わらないはずだが……
「提督、コレを私に見せて何が言いたいのですか? いまいち真意がつかめないのですが……」
「ごめんね。あとで説明するから。ついでにシチュエーションの項目を見てちょうだい」
「……」
提督の謝罪を受け、私は書類の先を読む。シチュエーションの項目には、その轟沈のケースがどのような状況下で発生したのかが簡潔に書かれている。
ケース1.○○鎮守府:駆逐艦 若葉
戦闘中に戦艦タ級の砲撃を受け大破判定。そのまま追撃戦を強行。
戦艦レ級の砲撃を受け轟沈。
ケース2.XX鎮守府:
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