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暴れん坊な姫様と傭兵(肉盾)
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あぁぁぁああん!

 無理無理無理無理むーりぃ!


 顔は合わせているけどここまで綺麗に無視されると、もう心の中で(なげ)きたくなった。

 手荒に(あつか)わないように言われても、仮面の人は全然意思疎通(いしそつう)も何もあったものじゃない。
 それどころか人形に話しかけてるみたいに反応もなく、まるで自分が物凄くお間抜(まぬ)けに思えてきた。



「はぁ〜〜〜……」

 もう、溜め息しか出ない。

 傭兵(ようへい)生活ではなかった事だけど、明日からはお姫様の従者(じゅうしゃ)みたいな仕事をさせられる。
 つまり…少なからず人と対面してやっていかなくちゃいけないって事だ。
 しかもその筆頭(ひっとう)はあのとんでも姫陛下ときた。

 ハハ……心が折れそう。

 この(デトワーズ)では傭兵(ようへい)でなくなった上に、仮面の人には無視されて……こんなんじゃうまくやっていける自信ないよぉー!




 ナデナデ―――。


「え…?」

 ふと、誰かに頭を撫でられた。
 先行き不安に項垂(うなだ)れていた自分の頭を、自分以外の誰かに撫でられている。

 一体誰だろう、と思って顔を上げたら―――仮面の人が手を伸ばしていた。


 よく見てみれば自分よりもだいぶ小柄な、子供のような体躯(たいく)だった。
 そんな小さな体を背伸びさせて、それでも届かない頭に腕いっぱいに伸ばして、僕を(なぐさ)めるように撫でてくれていた。


「―――」

 なんだか…ジンワリと心に暖かいものが込み上げてきた。

 人形のように無機質で、自己紹介も出来ないような無感情な人だと…そう思っていた。
 こんな無表情――仮面で見えないけど――でも本当は無口なだけで、実は優しい人なのかも知れない。



 だから―――ほんのちょっとだけ明日は頑張ろうって、そんなに気になれた。




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