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暴れん坊な姫様と傭兵(肉盾)
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い事。
 一つは、明日から姫陛下のお付きになるという事。
 そしてもう一つは……。


「―――、――」

 この仮面の人である。
 終始(しゅうし)視線は自分に向けて(はばか)らなかったこの人は…とうとう自分の泊まっている部屋にまで押し込んで来たのだ。

 密室に二人きり…怖い。

「あのぉ…」
「―――、――」

 返事はない。

「出来れば、出ていってもらいたいかな〜…なんて。 ほら、帰る所もあるでしょ?」
「―――、――」
「はぁ〜…」

 あの仮面の人はひたすら何も喋らずこの酒場にまで付いてきた。
 すぐに人気のない二階へと移動していったが、それからずっと自分に視線を向けて離さなかった。
 そして部屋にまで着いて来て今に(いた)る。

 この仮面の人が何なのか……実は全然わからない。
 デトワーズ皇国の宰相のロックスに、この仮面の人の事を()いてみたが…返答はこうだ。


 ―――アレについて秘密です。


 その言葉から始まった。
 僕は意味がわからず首を(かし)げたが、ロックスは一方的にこう()げたのだ。


『注意してもらうというのはアレの扱いの事です。 アレはキメラ…その名前だけは教えておきましょう。 皇国としてはそれほど重要ではないものの、常識の範疇(はんちゅう)で手荒に(あつか)わないように気を付けてください』

 ちなみに……常識の範疇(はんちゅう)を超えたらどうなるか………答えてくれなかった。
 キメラとかよくわからないけど…なんだか、余計に怖くなった。

 チラッ。

「―――、――」

 チラチラッ。

「―――、――」

 うぅ……無言が怖い。

 僕は自然と仮面の人から心の距離を離したい気分だった。
 一度も言葉を交わしていないけれど、だんだん印象が薄気味悪くなっていく。

 かと言って拒絶するほど強気には出れないし、何か悪い事をしたわけじゃない…それに何より―――。

「一応…人なんだよね?」

 色白で、仮面で、無言で、不気味だけど……ちゃんと人である事には違いなかった。
 それは宰相のロックスも保証してくれた。
 人以外の何かかと危惧してたから、そこだけは安心出来た。

「あのぉ…は、初めまして」
「―――、――」
「今更かも知れないけど、自己紹介とかどうかな? ほら、名前も何も知らないでしょ?」
「―――、――」
「お友達に…いや、知り合いに……いや、せめてお互いに初対面くらいにはなっておきたいかな〜、って…」
「―――、――」
「僕、レヴァンテン・マーチン、悪い傭兵(ようへい)じゃないよー」
「―――、――」



 ………………宰相さ
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