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かも知れないけど…傭兵ができない事と、お姫様の従者だなんて気が重すぎる。
このダンディーで、どことなく頼れる雰囲気を持っている宿屋の店主ならあるいは、うまい事あのお姫様が見逃してくれるような名案があるかも知れない。
そんな気がする!
「ハハハ。 私はしがない宿屋兼酒場の店主に過ぎないよ」
「ですよねー」
自分は乾いた笑いを零すしかなかった。
お姫様に目を付けられた、なんて事情をどうにか出来るとは本気で思ってなかったけど、まともに相談出来る相手がいないのが辛い。
もう一杯エール飲もう…。
「何だったら、あそこの方に訊いたらどうかね?」
追加のエールを飲んでいたら、見かけたようにエメリッヒ店主はそう促してきた。
視線と顎をクイッと指し示すと、自分はそこに目を向けた。
指し示した方向には奥まった所にテーブルがあった。
二階へと繋がる階段の下近くにあって、騒がしい喧騒からちょっと離れているから少し特別な位置にある。
こうして自分がカウンターで酒に逃げていなければ、まず視界に入らない場所だった。
そこにはどこかで見たことあるような人がいた。
ん〜…―――いや、まさかね、人違いだよね?
「誰、ですか?」
「ハハハ、目を逸らしてどこを見てるんだい傭兵君? そんな見当違いの方向じゃなくて、あそこだよあそこ、階段の下辺りだ」
ささやかな現実逃避をエメリッヒ店主は見逃してはくれず、やんわりと軌道修正させられた。
軋みそうになりながらギギギ…と首ごと視線を向けた。
階段の下で、静かな蝋燭の灯りが揺らめく空間。
そこには山盛りの料理を平らげているどっかの誰かさん………あれって、“宰相のロックス”さんその人じゃあないででしょうか…?
………なんで?
エドヴァルド・ロックス、確かそんなそんな名前の宰相。
文句なしにこの国で偉い人だ。 偉い人のはずだ。
そんな人がなぜ、この宿屋と酒場を兼業しているような所で食事しているのでしょうか?
それも、ちょっと羨ましいくらいモリモリと…ムシャムシャと…バクバクと……食事を平らげている。
地位と場所がこれほど不一致に感じるのも珍しい…というかおかしいと感じるのも仕方ない。
「……やっぱりあれって…宰相さん、ですよね?」
「そうだね。 おっと、あまり大きな声で言っちゃダメだからね」
エメリッヒ店主は人差し指を唇に当ててほのめかしてき
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