暁 〜小説投稿サイト〜
暴れん坊な姫様と傭兵(肉盾)
16
[1/9]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話

「あはははっ、それで解雇(クビ)になっちゃったの?」


 以前に泊まっていた宿付きの酒場で、(はばか)る事のない微毒のあるセリフで笑い飛ばされた。

 これまでに(いた)経緯(いきさつ)を語って、酒場の看板娘であるエマちゃんに(なぐさ)めてもらえたらいいな〜、というちょっとした下心(したごころ)は打ち砕かれ、僕はションボリした。
 久しぶりにこの宿に戻ってきて、以前のように宿泊しに来たのにこの仕打ちである。


 こんばんわ、今日まで傭兵(ようへい)だったレヴァンテン・マーチンである僕は、傭兵(ようへい)でなくなったレヴァンテン・マーチンになってしまいました。

 これを自分自身で、エマちゃんのように笑い飛ばせたらと思う。
 あいにくと、僕の口から出てくるのは苦笑いと空笑(からわら)いだけです。

「ハハ、ハ……そう、なんだけどね……意味わからないよぉ…」

 自分は心の底からそう(なげ)いた。



 ―――どうしてこうなった?


 傭兵(ようへい)人生を生きていた僕が何かしただろうか?

 少なくともこれは、今までの傭兵(ようへい)人生からして初めての展開だ。


 意味がよくわからないままクビにされて、意味がよくわからないまま新しい仕事を貰った。
 傭兵(ようへい)()めさせられて、代わりにデトワーズ皇国で(もっと)も偉い人の付き人…従者(じゅうしゃ)のようなお仕事を(もら)った。

 ただそれだけ…のように思えるけど、別世界の事柄(ことがら)のように思えてあっさりと僕の理解を()えてしまう。
 理解しようと思っても理解する前に殴り倒されてしまったのだから…結局なし(くず)しに転職させられて今に(いた)る。

「うぅ…エールもう一杯〜!」
「はーい、毎度♪」

 傭兵(ようへい)として(かせ)いで消費して、最終的に残った分の金を自棄(やけ)っぱち気味(ぎみ)にエールに()ぎ込む。
 傭兵(ようへい)()めさせられて自棄酒(やけざけ)である。
 エマちゃんは止める素振(そぶ)りなんて欠片もなく代わりのエールを運んできた。


 ―――そうやって良い様にされて、酔いが()めたら財布の軽さに青褪(あおざ)める事になるのだと後になって気付く。



「でも、出世したとも言えるのでは無いかな?」


 宿屋(けん)酒場の店主であるエメリッヒはそう口を(はさ)んできた。

 優雅(ゆうが)に、ダンディーに、視線は向けずにグラスを(みが)く姿が実に(さま)になる。
 カウンターの向こうにいながらも耳を(かたむ)けているのか、滑り
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ