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「あはははっ、それで解雇になっちゃったの?」
以前に泊まっていた宿付きの酒場で、憚る事のない微毒のあるセリフで笑い飛ばされた。
これまでに至る経緯を語って、酒場の看板娘であるエマちゃんに慰めてもらえたらいいな〜、というちょっとした下心は打ち砕かれ、僕はションボリした。
久しぶりにこの宿に戻ってきて、以前のように宿泊しに来たのにこの仕打ちである。
こんばんわ、今日まで傭兵だったレヴァンテン・マーチンである僕は、傭兵でなくなったレヴァンテン・マーチンになってしまいました。
これを自分自身で、エマちゃんのように笑い飛ばせたらと思う。
あいにくと、僕の口から出てくるのは苦笑いと空笑いだけです。
「ハハ、ハ……そう、なんだけどね……意味わからないよぉ…」
自分は心の底からそう嘆いた。
―――どうしてこうなった?
傭兵人生を生きていた僕が何かしただろうか?
少なくともこれは、今までの傭兵人生からして初めての展開だ。
意味がよくわからないままクビにされて、意味がよくわからないまま新しい仕事を貰った。
傭兵を辞めさせられて、代わりにデトワーズ皇国で最も偉い人の付き人…従者のようなお仕事を貰った。
ただそれだけ…のように思えるけど、別世界の事柄のように思えてあっさりと僕の理解を超えてしまう。
理解しようと思っても理解する前に殴り倒されてしまったのだから…結局なし崩しに転職させられて今に至る。
「うぅ…エールもう一杯〜!」
「はーい、毎度♪」
傭兵として稼いで消費して、最終的に残った分の金を自棄っぱち気味にエールに注ぎ込む。
傭兵を辞めさせられて自棄酒である。
エマちゃんは止める素振りなんて欠片もなく代わりのエールを運んできた。
―――そうやって良い様にされて、酔いが醒めたら財布の軽さに青褪める事になるのだと後になって気付く。
「でも、出世したとも言えるのでは無いかな?」
宿屋兼酒場の店主であるエメリッヒはそう口を挟んできた。
優雅に、ダンディーに、視線は向けずにグラスを磨く姿が実に様になる。
カウンターの向こうにいながらも耳を傾けているのか、滑り
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