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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第三十一話 第一機動艦隊
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被害は零ではないだろうけれど、できる限り味方の損害を少なくしながら敵の有力な艦をつぶしておきたいの。そして、最終的には私たちの進路を阻むこの第一機動艦隊という障害は取り除いておきたいわ。何か他に案があれば承るけれど。」
尾張は何も言わず黙った。それは不服の意味ではないことはこの妹の横顔を見ている紀伊はわかっていた。
「なら、実働部隊の編成やそのほかの具体的な作戦方針について、大淀。」
長門、陸奥、そして大和や大鳳たちはこの直前に話し合いを行い、もう作戦を極端に隠し立てしないことに意志を決定させた。いるかどうかもわからない裏切者を捜索するよりも目前の戦いに全力を挙げて当たるべきだという思いがあったし、何より仲間を疑っていては存分に力を発揮できないことに気が付いたからだ。
「今回の作戦は、高速機動艦隊を投入します。全速力で敵に接近し、一撃をもって敵を撃滅し、敵が増援に来る前に急速反転離脱を図るのです。」
大淀の指がポータブルキーを叩き、艦娘たちの編成表がディスプレイ上に表示されていく。
「オーダー表は以下のとおりです。讃岐、霧島、比叡、北上、大井、赤城、加賀、愛宕、矢矧、能代、野分、磯風、舞風、清霜そして、旗艦として紀伊。」
「なっ!?」
紀伊が声を上げるのと、周囲がざわざわという声を上げるのとが同時だった。
「どうして私が?!同行するのは実戦経験が豊富な先輩方ばかりです。それを差し置いて私が旗艦だなんて!!」
これまで旗艦を務めたことはある。だが、それは日常的な哨戒艦隊としての任務であり、今回の様な大規模作戦の旗艦を務めることは紀伊には経験がなかった。
「これは規定事項よ。」
葵がきっぱりと言った。
「ですが!」
「先日の横須賀鎮守府での戦闘指揮は見事だったわ。あなたが湾内で奮戦してくれたからこそ被害はあれで済んだのかもしれない。それにこれまでもあなたの戦術眼があったからこそ、艦隊が救われたことが何度もあったということは聞いているし。」
「ですが!!」
立ち上がろうとした紀伊の肩に手が置かれた。赤城だった。
「赤城さん?」
「紀伊さん。ご自分を信じられないのですか?」
紀伊の動きが止まった。
「私を、みんなを、これまで叱咤激励してくださったあなたの姿はとても立派でした。でも、ご自分のこととなるととたんに自信がなくなるように私には見えます。」
「それは、事実ですし――。」
「いいえ、違います。」
赤城は立ち上がった。さすがに第一航空戦隊の双璧である。凛とした挙動に紀伊は気圧されて彼女を見上げるしかできなかった。
「・・・・こういう言い方をしたくはないのですが、あえて言わせてもらえば、あなたは、卑屈です!!」
紀伊の眼が衝撃で見開かれた。この言葉は以前にも聞いたことがある。呉鎮守府で南西諸島方面に出撃する前のことだ
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