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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第三十一話 第一機動艦隊
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び上がるのが見え始めた。その瞬間三笠は胸を押さえた。
「くっ!!」
あの追い詰められた時の胸の強烈な鼓動を感じ取ったのだ。
これから自分は究極の選択をしなくてはならない。数ある戦法の中から血のにじむような思いで絞り出し、なおかつまだどちらを取るかを決めかねている。それは今この時に至っても同じことだった。
「三笠さん、どうするんですか?あの戦法・・・・。」
砲術妖精の問いかけに三笠は答えなかった。代わりに拳がますます握りしめられる。

安全策をとるか、それとも乾坤一擲で大勝負に出るか。

(私自身は死ぬ覚悟はできてる。でも、他のみんなを巻き添えにしてまで取ることができる?そんなことはできない。通常の反抗戦だって私たちは充分に相手にダメージを与えられるところまで訓練してきたわ。)
三笠がためらっているのは、もしこの戦法をとれば、文字通り自分だけでなく、味方全艦隊にまで凄まじい敵の砲火が集中するからだった。
「距離、1万1000!!!」
「三笠!!」
再び敷島が声を張り上げた。
「あんたどうするか、まだ迷ってるんじゃないでしょうね!?」
「違うわ!!ギリギリまで引き付ける!!!」
そう振り向いて叫び返しながら三笠はまだためらっていた。後続を走る春日、日進という二人の装甲巡洋艦の二人と一瞬だったが視線がかち合ったからだ。二人は青い顔をしてみるからに不安げな様子だった。
(無理もないわ・・・・本来であればあそこの席には初瀬姉様と八島先輩がいるはず・・・それを装甲化されているとはいえ、巡洋艦が据わるなんて・・・・。)
もし、開戦が始まれば二人にも当然砲弾が集中する。そうなれば戦艦に比べて装甲が薄い二人は下手をすれば轟沈してしまう可能性があった。
 三笠自身は覚悟を決めていた。だが、最後の一歩が踏み出せない。踏み出した瞬間、待っているのは苛烈な攻撃だ。その中の何人が生き残れるかはわからない。ある者は死への舗装された道を進むことになるだろう。
(どうすれば・・・どうすれば・・・・!?教えて、初瀬姉様!!)
三笠は祈るような思いですぐ上の姉のことを想った。おっとりしているが銀髪をなびかせた美貌だった姉は姉妹の中で一番の仲良しだった。ことに三笠が連合艦隊総旗艦に軍令部からの要請で就任した時、敷島の風当たりが強く、三笠はいつも罵声を浴びながら訓練から帰ってきた。こらえきれずに布団の中で涙を流していた時もある。そっと涙を流していると、初瀬はいつもそれに気が付き、自分も布団の中に入ってきて、彼女を抱きしめて慰めてくれたのだった。

 その姉が今はいない。だから自分で決めなくてはならない。

「距離、1万!!」
敵の艦娘たちの姿がはっきりと浮かび上がった。北欧の神話に出てきそうな戦乙女の鎧の様な銀色の衣をまとい、艤装の砲塔の照準をこち
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