EPISODE06勇者X
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みはなおも深く微笑む。常闇のように。
凱の問いに答えることなく、黒衣の男はなおも状況を楽しむかのように、炎の悪魔と自衛騎士団の戦闘を睥睨している。
「見ろ。ご自慢の騎士団が絶体絶命のようだが」
「……!!」
黒衣の男の言葉は、冗談でもなんでもなく、事実そのものだった。
いつの間にか、炎の悪魔は魔剣アリアを手にしているではないか。炎と風を混ざらせた焦熱旋風が団員達を凪いでいく。
このままでは、3番街自衛騎士団が全滅してしまう!
「団長!?セシリー!?」
ハンニバル団長の悪戦苦闘ぶりに、凱は咄嗟に声を上げた。
そして、地に伏しているセシリーを見て――――凱は……
炎の悪魔に苦戦するハンニバル。やはり実体のない「もうひとつの」炎の悪魔とは相性がよくなさそうだ。切り裂こうとして溶けた剣を見ては、手をこまねいているようだった。
(……どうする!?)
凱の脳裏には、瞬間的に選択肢がよぎる。
1つの選択は――
黒衣の男は目の前にいる。捕縛すれば今後の憂いを絶つ目標を達成できる。
しかし、そのためには自衛騎士団を犠牲、つまり全滅することをくくらなければならない。
2つの選択は――
黒衣の男を捕まえる任務を放棄し、自衛騎士団の応援に回る。
しかし、そのためには黒衣の男を見逃すことになる。つまり、このような違った形での犠牲が増え続けることを覚悟しなければならない。
そして――
――ダメだ!こんなこと考えちゃいけない!――
そして――そして――
――私は!目の前に映るすべてを救う!――
(そうだ……そうだよな!セシリー!)
紅い髪の少女騎士の願いが、勇者の燻ぶった魂に灯りをもたらした。
理念じゃない。信念と執念だ。
このクソ野郎を踏ん捕まえて、下の惨劇をも止めて見せる!
「見せてやる!折れない勇気を!」
「ふん!……見せてもらおうかぁぁぁ!!」
勇者の咆哮を!黒衣の男が吐き捨てるように侮蔑する!
切り結び!切り刻み!抉り!裁き!互いの血しぶきが舞踏する!
「ぐあぁぁぁぁ!!!」
「ぐうううう!!!」
紙一重の差で腹部を慈悲亡きフランベルジュの刃にて抉られた。内蔵ごと持っていかれるかと錯覚したかのような激痛。血液が全身を逆流して凱は激しく吐血した!
もっとも、奇しくも黒衣の男も同じ部位をウィルナイフで抉られたようだが――
「残った内蔵も抉り取ってやるよ!!」
「ならば!俺は貴様の内蔵を擦り砕く!!」
「なりふり構わないか!随
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