EPISODE06勇者X
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の唇を読み取ったのだ。
「コレデオレハスクワレル!マケン!オレノミライ!」
果てしない衝動。望むのは未来。その為の魔剣。
凱とセシリー。二人の絶叫が会場に木霊する。そして、遅かった。
「「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」
男は本能のままに唱える。悪魔の文言を!
「―――――――――――――――――!!」
不快なる文言は、悪魔へ生まれ変わるおまじない!
周囲の空間に点在する霊体が、浮浪者を中心にして、無尽蔵に人肉を喰らい始める!
人間の血肉という物質を得た霊体は、対価を得てようやく契約者の願いを果たすべく実体化する!
――悪魔契約は、たった今果たされた!――
真紅の炎が立ち上り、その勢いはまるで天を貫かんとする様だった。
「……一体何が起きたんだ!?」
生まれて初めて目にする悪魔契約を前にして、凱はただ茫然と立ち尽くすばかりだった。
固唾を呑み、ただただ状況を見渡すばかり。灼熱の空間が肌をわずかに焼き、焦燥の環境は喉を乾かす。
先ほどの熱狂とは違う、根本的意味で喉を焼き尽くす空間は、あの『市』の活気あふれる場を180度変貌させた。
「どうして、あの人が……そんな」
信じられない表情で、凱の視線はあの悪魔に向けられていた。心の整理が追いつかないような、妙な焦燥感がへばりつく。
市の会場は、まるで蜂の巣をつつかれた以上の事態となった。逃げ惑う人々は出口を求め、譲ることなく、互いが互いを詰まらせるようにして、出口をふさぐ始末。
このような不測の事態に備えていた自衛騎士団達は、即座に観衆達への非難活動を開始する。冷静な避難誘導がなければ逃げおおせることなどできるはずがない。
自衛騎士団にとって、悪魔出現という事態は想定内だ。そう思わせるような段取りは幾重にも張り巡らせていた。
「精霊達よ!不浄なる輩を沈めたまえ!」
壁外に待機していたローブを纏いし騎士団達が文言を唱える。これは玉鋼を媒介とした祈祷契約だ。
会場の四隅に設置されていた祈祷契約の起動装置が作動した。電離現象捕縛のプラズマホールドに近い拘束力場が炎の悪魔を捕える!
既に悪魔契約の余波で何人か犠牲が出てしまったのが唯一の痛恨事だった。
「祈祷契約班!血を吐いてでも唱え続けろ!」
怒号のようなハンニバルの指令が、戦場と化した会場に響き渡る。それを聞いていた凱は、ハンニバルに火麻参謀の面影を見た。
「先日の会議で話した通りだ!ガイ!セシリー!」
「「団長!?」」
「祈祷契約で悪魔を包囲!ヤツの逃げ場を封じ、ワシが叩き潰す!」
戦争を思い出すな――誰にも聞こえないような声で、ハンニバルはつぶやいた。不敵に笑ったその横顔は、戦慄
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