EPISODE06勇者X
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を折る――立てた指は全て折られ、いつしか拳になっていた。その拳は、まるで現れた敵を倒すシンボルのように見えた。
「ほら、解決だ」
「ガイは単純すぎる!」
「これぐらい単純なのがいいんだよ」
緊張の抜けないセシリーは、凱にまだ言いたいことがあったのだが、なんだか緊張が抜けてしまっていた。
だが、おかげで落ち着くことが出来た。
(ありがとう、ガイ)
なんだか、ひとかけらの勇気をもらったような気分になった。
怖かった気持ちを一払するように、アリアの手をとり、表舞台へ駆け出した。
「行こう!アリア!」「うん!!」
二人は、いつか誓い合った『最高の思い出を君に――』を果たすために――
――銀閃の風よ。願わくは、どうか、彼の魂を天国まで運んでくれますように――
【独立交易都市・市の会場】
「ご覧のとおり!魔剣は風を産むのです!!」
ただいま、独立交易都市の『市』の真っ最中。
銀閃の風が、薙ぎ、魔剣を立証するために設置されていた木板をかすめ取る!
摩訶不思議な現象を、セシリーの眼下にいる観客は食い入るように見ていた。
一番の目玉商品である魔剣がおっぴろげになってから、観客達のルツボは最高潮に達していた。
熱声が空気を満たし、喉を乾燥させて焼く。つまり、『競り』が始まったのだ。
――1本の刺突剣その銘は魔剣アリア――
(やればできるじゃないか。セシリー)
ひとり、セシリーの実演販売の成功を心から喜ぶ青年、その名は獅子王凱。
以前はGGG機動部隊隊長を務めていた彼も、現在は独立交易都市の秩序を守る騎士として日夜活動しているのだ。
もう一人、彼女の様子を心配して見に来た不愛想な刀鍛冶も来ていたのだ。多分、観客の中に紛れてセシリーを見守りに来たのだろう。
ルーク=エインズワース。ちょっと前までセシリーを心配して様子を見に来ていた彼だが、どうやら少しトラブルがあったらしい。今の彼はかなり不機嫌っぽい。
でも、結局はセシリーの晴れ舞台にしっかりと立ち会っている。
――素直じゃないな。ルークも――
そんな二人の関係に、凱は何だか微笑ましく思えてきた。
「ん……?あれは!昨日の!?」
ふと、視界に入る浮浪な人物。
凱は観客席の遠く、不審な男を一人見つけた。
あの男は確か……
「「ミツケタ」?」
偶然にも、発音が重なる。
その男の発音は、完全に会場の声でかき消されている。その為に普通なら聞こえるはずのない声を、凱はそのようにとらえた。
凱自身も実際に男の声を聞き取れたわけではない。男
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