EPISODE06勇者X
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越したことはない。今回の悪魔襲撃も、あくまで可能性の話なのだから、必ず起こるわけではない……そう思いたい。
そして二人の上司の視線が凱に向けられる。
「「ガイ」君」
「わかっています。見つけ次第、俺が黒衣の男を!!」
それからして、3人は詳細な打ち合わせを行い、その会議は深夜にまで及んだ。
【???】
暗い、暗いふきだまり。ひどく暗い夜の街に、一人の浮浪者が死にかけていた。
顔はひどく痩せこけ、骨の形がよくわかるほどに角ばっていた。
左手、薬指、中指、小指は、綺麗にえぐられたようにかけている。
「なぜオレは……救われない……」
聞こえるのは、夜間でありながらにぎやかな街の声。様々な人が行きかう酒盛りの宴。彼にとっては別世界の出来事のように感じていた。
しかし、浮浪者の空間は停止したままだ。ただ静寂な時のみが動くことを許される異質な空間。まるで彼だけを隔離空間に閉じ込めたかのようだった。
「失礼」
矢先だった――
死神は突然と浮浪者の前に現れた――
浮浪者の左手を手に取り、まじまじと観察する。その様子は、まるで品定めをするかのように――
「やっぱり、こういうのは経験者だよなぁ……初心者はだめだめだった。勝手にやって勝手に仕掛けて勝手にやられやがった。ダカラ今度はお前に夜露死苦する」
浮浪者を鑑定し終えて、即決した。そして黒衣の男は指先に何かをつまみ、浮浪者の口に無理やり放り込む。
「呑め」
耳元でささやく――
「呑め。呑め。呑め。呑め。呑め。呑め。呑め。呑め。呑め。呑め。呑め。呑め。呑め。呑め。呑め。呑め。呑め。」
呪詛のように囁きが繰り返される。
「呑めよぉ」
その時、黒衣の素顔が月の光に照らされていた。
忌々しい程に瞳に光を宿らせ、最高に晴れやかな笑顔。全く忌々しい。
そして浮浪者は確信した。この世界に初めから神はいない……悪魔ならいるということを。
「……ぁ」
限界だった。喉は砂漠の大地よりも乾き、腹は海よりも深く空腹していた。
いつの間にか、黒衣の人物は消えていた。
このまま、じっとしたまま、何もしないまま、ただ死を待つばかりだった。
かろうじて生きてはいたが、やがて訪れる生命の朽ちる瞬間が、とてもとても怖かった。
違う。浮浪者が本当に怖いのは、死ぬことじゃない。
――最期まで一人でいることだった――
先ほどの黒衣の人物もいなければ、死神さえも迎えに来ない。
文字通り、全てに見放されたのだろうか。
「……うぁ?」
いつしか、頭上に誰かが立っていた。現れた影に、浮浪者の瞳は移ろうように漂
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