ターン60 蹂躙王と怪異の演目
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こかでほんの少し違った結果が起きていれば、大賢者は今もあの森の奥で静かに暮らしていられただろう。
どんどん気持ちが沈んでいく僕の方をちらりと見たバックアップ・ウォリアーが、明後日の方向を見つめたまま口を開く。
「あの人からの遺言がある。あの人は最後まで君のことを心配していたが、『たとえ君の目の前に道があろうとも、その道を進むか否かは君の決めることだ』だそうだ。それと私のことで気に病むな、これは私が決めた上で進んだ道だ、とも言っていたな」
「……」
辺境の大賢者からの遺言を、心の中でじっくりと噛みしめる。やがてぽつぽつと、僕がこの世界に来てからのことを話し始めた。いざ口に出してみるといかにも嘘くさい話だとは我ながら思ったが、少なくともバックアップ・ウォリアーは一切口を挟まずにずっと僕の話を真剣な表情で聞き続けてくれた。
途中で休憩を取って数日ぶりの食事にありついたりしていたら、話が終わるころにはすっかり夕暮れ時になっていた。小さな窓から見える外の様子をぼんやり眺めていると、突然外の様子が騒がしくなってきた。軽く舌打ちし、バックアップ・ウォリアーが腰から無線機を引っ張り出す。
「おい、応答しろ!この騒ぎは一体なんだ!」
『ほ、報告します、隊長!南南西より敵襲、今のところ敵は1人ですが、恐ろしい奴です!』
「南南西だと?その方角には串刺しの落とし穴が仕掛けてあったはずだ、投石部隊にはそこに誘導するよう命じて……」
『だ、駄目です隊長!とんでもない速さです、もう本陣まで……うわぁーっ!』
「おい、応答しろ!誰か!誰かいないのか!……チッ、私が出よう。君はここで待っていてくれ」
「いえ」
思いのほか冷静な、というよりむしろ冷たい声が出た。驚いて振り返る軍人の目には、さぞかし奇異に映ったことだろう。なぜとは説明できないけれど、強いていえば感覚でわかる。今この場所に近づきつつある敵襲……その殺意は、真っ直ぐ僕に向けられている。それに体が勝手に反応し、ダークシグナーとしての力が強制的に開放されつつあるのだろう。今僕の目は紫色を帯び始め、制服の下では紫の痣が体の表面を這い続けていることだろう。
「僕が、行きます。すいませんが、デッキを返して下さい」
「……わかった。ついてきなさい」
これ以上の説得は時間の無駄だと諦めたのか、それとも僕の調子に押し切られたのか。なんにせよ、話が早いのはいいことだ。ベッドから起き上がったのを確認し、無言で部屋を後にするバックアップ・ウォリアーの後ろに続く。いくらか歩くことになるかとも思ったが、何のことはなくすぐ隣の部屋に入っていった。その部屋の壁に立てかけてあるのは、確かにアカデミア仕様のデュエルディスク。
「あれが君のデュエルディスクだ。デッキには一切触れていない、これは同じ
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