ターン60 蹂躙王と怪異の演目
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「まあいい……戦闘経験のない者にそこまで期待するのも筋違いだからな。ただ、次は無いと思え」
……なんか、この隊長とやらはずいぶん苦労しているらしい。心の中で同情していると、全身緑色の軍服のようなものに身を包んだ男がきびきびした動きで入ってきた。ヘルメットとゴーグルで顔を隠しているため素顔はよくわからないが、恐らくこの男が隊長とやらだろう。
「目が覚めたようだな。私は……そうだな、デュエルモンスターズでいうところのバックアップ・ウォリアーという者だ。私自身はただの戦士族だが、今はここでフリード軍後方支援部隊を率いている」
「バックアップ・ウォリアーさん……」
復唱すると満足げにうむ、と頷き、その後一言ぼそりと付け足す。
「済まないね。私も本名を名乗りたいのだが、まだ君が敵になるか味方になるかもわからないからな。なにせこのご時世だ、ほいほいと本名を教えるわけにはいかないのだよ、遊野清明君」
このご時世、という言い方も引っかかったが、それ以上に気になることがあった。バックアップ・ウォリアーとは初対面のはずだが、僕の名前をなぜ知っているのだろう。そんな訝しげな視線に気づいたらしい軍人が、ばつが悪そうに肩をすくめる。
「あまりプライバシーに干渉したくはなかったが、これも仕事なのでね。君が眠っているここ数日の間に、少々荷物をチェックさせてもらったよ。といっても、身に着けていた学生証や財布以外はデュエルディスクとデッキ、それと白紙のカードが1枚程度しかなかったようだが」
言われて服の中を探ってみると、確かにいつも入れてある位置に学生証がない。バックアップ・ウォリアーが差し出したそれを受け取り、間違いなく僕の物であることを確認してまた仕舞い込む。白紙のカードは、これで残り1枚。
「あの、僕のデュエルディスクは……」
「その前に、聞かせてもらいたい。一体、君に何があったのかを。私があの恐ろしい雷撃と、それを放つ白い龍の姿を見て駆け付けた時にはすでにデュエルは終わっていて、その場所には君と辺境の大賢者が倒れていた」
「そ、そうだ!あの人は、あの人は無事なんですか!?くっ……!」
急に動いたせいでまた痛み出した体に怯んでいるうちに、バックアップ・ウォリアーのゴーグル越しに見える顔がどこか遠くを見るような目になる。ややあってぽつりと告げた言葉は、体中の痛みを忘れさせるには十分だった。
「……彼とは私も懇意にしていてね、あの人の最期を看取れたのは運がよかったと思っているよ」
「そう、ですか……」
最期を看取れた、か。するとやはり、僕がしたことは無駄だったのだろうか。もとはといえば僕があの森に出てきさえしなければ、あるいは砂漠の世界でクロノス先生に負けさえしなければ、いっそラビエルに負けていれば……ど
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