ターン60 蹂躙王と怪異の演目
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……今のは危なかった。たまたま正気に戻れたからよかったものの、あと少しこのデュエルが長引いていればそれだけ心の闇も膨れ上がっていただろうし、そうなっていたら自分を止められたかどうかはわからない。はあはあと荒い息をつきながら、ふらふらと村に背を向けて歩きだす。
そういえば、とふとおかしな点に気づいた。デュエルはとっくに終わったのに、まだデスデュエルの衝撃が襲ってこない。気になって腕を見ると、そこにあったはずのデスベルトの姿は影も形もなかった。
「あれ……?」
「ま、待ってくれ!」
訝しんでいるうちに後ろから声をかけられ振り返ると、バックアップ・ウォリアーがこちらへ走ってくるのが見えた。さすがの軍人の脚力ですぐ僕に追いつき、切羽詰まった様子で話しかけてくる。
「まず、君には礼を言わせてほしい。君のおかげで、我々後方支援部隊のみならずここにいるたくさんの民間人達も助かったよ」
「……たまたまですよ。ええ、たまたまです」
そうだ。僕がこのデュエルを受けた時には、悪魔への復讐のことしか頭になかった。バックアップ・ウォリアーをはじめとしたここにいるカードの精霊や、それ以外の人々を守るために戦うなんて正義の味方チックなことはまるで考えていなかった。
今回はたまたまそれが結果としてこの村を守ることに繋がったが、次もそううまくいくとは限らない。それどころか、僕自身がここを壊滅させる可能性すらある。だから、僕はここには長居しない方がいい。そしてそれを見抜いたからこそ、バックアップ・ウォリアーも無理に引き留めることができないのだろう。
「そうだ。僕が腕に付けてた機械って、どこ行ったか知りません?」
「ああ、あの腕輪のことか……ひどく強い電圧をかけられたせいで中身がぐちゃぐちゃになっていたから、とりあえず外しておいた。なにやらロックがかかっていたようだが、それも完全に壊れていたからね。まずかったのなら、今すぐ誰かに取ってこさせるが……」
「いえ、ならいいんです。そこら辺に捨てといてください」
強い電圧というのは、あのサンダー・ザ・キングの一撃のことだろう。普段なら喜ぶべきことなんだろうけど、このタイミングでデスベルトが壊れたというのは、果たしていいことなんだろうか。少なくともあれが生きていれば、僕が心の闇に飲まれて暴走したとしてもデュエルのたびに体力が吸収され、どこかのタイミングでストッパーになっていたかもしれないのだが。皮肉なもんだ、よりにもよって楽しくデュエルすることを何よりも妨害していたデスベルトが取れたことを素直に喜べなくなるだなんて。
「では、お世話になりました。ご飯、美味しかったです」
「……すまない」
苦痛に満ちた声音で、バックアップ・ウォリアーが敬礼する。この少年は我々の恩人なのに、なぜそ
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