ターン60 蹂躙王と怪異の演目
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になったその顔……それはすでに悪魔のそれではなく、その体の元となった辺境の大賢者のもの。
「……っ!ストップストップ、攻撃中止して!」
頭上の三つ首龍に精一杯の大声で攻撃を強制中断させようとしたが、すでにそれをするには遅すぎた。それでも辛うじて2つの首を明後日の方向に伸ばして雷撃のブレスを飛ばすサンダー・ザ・キングだが、残りの首からは既にブレスが老人に向かって放たれている。
気が付けば、半ば無意識に体を動かしていた。僕の体では小さすぎて盾にすらならないことは承知の上だが、それでも動かずにはいられない。いまだ体を動かすこともできない老人の前に行き、今にも到達しそうな雷撃との間に立ちふさがる。大賢者の体を持ち上げてブレスの直撃範囲外に持っていければそれが最善なのだが、それをするにはあまりに距離が離れすぎていて先にブレスが届いてしまう。
「くっ……!」
目の前が真っ白くなるほどの迫力と眩しさに目を閉じ、歯を食いしばって両手を広げ仁王立ちする。
その直後、想像をはるかに超える衝撃と全身の筋肉が痙攣するほどの電撃が僕の体に降りかかった。悲鳴を上げようにも口が動かず、全身の細胞ひとつひとつが電気の力に屈して痛みを訴える。これまでの闇のデュエルで受けた痛みは、よくも悪くもそのほとんどが物理的な衝撃ばかりだった。直接体を襲う電撃という全く未知なタイプの痛みの前には僕のちっぽけな覚悟など何の役にも立たず、意識が途切れる際にはこれでこの瞬間だけでも痛みから解放されるという喜びが真っ先に来たほどだった。
そして、今。一体何があったのか、僕には何もわからない。サンダー・ザ・キングの一撃をまともに浴びて意識が飛んだ僕が目覚めたのが、だいたい数時間前。一体あれからどれぐらいの時が経っているのか、そもそもここはどこなのか、まだ誰にも会っていないため話を聞くことができておらず、大事なことは何一つわからない。
「痛っ……」
ぼそりと声が漏れる。まだ電気の後遺症が体に残っているらしく、下手に動くと重い痛みと共に筋肉が突っ張るような感覚になる。少し動くだけでもこのざまだ、走ったりするなど問題外だろう。
それでもどうにか上半身を起こしたところで、部屋のドアノブがゆっくりと回るのが見えた。じっと見つめていると、音をたてないよう慎重な動きでドアが開きその隙間から人の顔がのぞく。まさか起きているとは思わなかったのであろう僕と目が合うことたっぷり5秒、ドアも開けっ放しでその人が元来た方向へ駆けていった。騒々しい声がこっちまで聞こえてくるけど、いいんだろうか。
「隊長、隊長!あの子供、目が覚めました!」
「何?わかった、私が行こ……待て、この馬鹿者!ドアも閉じずに報告に来るやつがどこの世界にいるか!」
「ひえっ、も、申し訳ありません!」
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