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遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン60 蹂躙王と怪異の演目
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「……はぁ」

 ため息をつき、鉄格子のはまった小さな窓の隙間から空を見上げる。どんよりと厚い雲が立ち込めた夜空は、僕の気分にもぴったりだった……なんて、詞的なことを言う気分にもなれない。そもそもそんな相手もいない。僕は今ここに、1人きりだ。
 だが、自分の境遇に文句をつける気はない。そんな図々しいこと、ちらりと考える気にすらならない。石造りで殺風景な部屋のせいで無性に冷たく感じるベッドに寝そべっていると、自然とあの時のことが頭をよぎってきた。そう、あれは、僕がサンダー・ザ・キングの特殊能力を使ってダーク・バルターにとどめを刺したあのデュエルが終わってからのこと。といっても、大した話ではない。こんな何もない部屋にいると、それぐらいしかすることがないのだ。





「あ……ぐ……」

 地面に無様に転がったダーク・バルターの方から、かすかなうめき声が聞こえてくる。しつこい奴だ、サンダー・ザ・キングの3回攻撃を受けてまだ息があったか。

「もっとも、生きてて可哀そうにとは思うけどね。ねえ?」

 同意を求めて頭上を仰ぐと、ゴロゴロと途方もなく巨大な生物が喉を鳴らすような音が帰ってきた。そこにいたのは、まさしくたった今死闘を制したばかりのサンダー・ザ・キングの白い巨体。なぜデュエルが終わったのにソリッドビジョンが消えていないのかはいまいち謎だが、これはむしろ都合がいい。

「まあ、生かしておくのも禍根が残るしね。どーせ今更許す気もないし、構わないから遠慮なくとどめ刺しちゃってよ」

 僕の命令を待っていた、といわんばかりに、サンダー・ザ・キングの全身に再びプラズマが走り出す。別に普通に攻撃するだけでもよかったのにわざわざ帯電能力まで使っているところを見ると、オーバーキルは承知のうえで最大火力で終わらせる気のようだ。それだけ、僕のダーク・バルターに対しての怒りやら憎しみやらが深いことをこの龍は読み取ってくれたのだろう。そしてそんな知能があるところをみると、どうやらこの壊獣たちも精霊の力を宿しているらしい。それとも前提が逆で、精霊として自我があるからこそこうして僕の呼びかけに応えてくれたのだろうか。どちらにせよ、そんな鶏が先か卵が先かなんて話は僕には関係ないことだ。
 ともあれ見かけによらないその細やかな気遣いに心の中で感謝しつつ白い巨体に走るプラズマの量が徐々に増えていくのを見守っていると、やがてその量も最大に達したのが感覚で理解できた。じっとこちらを見るサンダー・ザ・キングの3つの頭に、そっと頷いて口を開く。

「これで終わらせる!行け、サンダー・ザ・キ……ん!?」

 今まさに最終命令を出そうとしたその時、うめき声と共に苦しみ続けるダーク・バルターの体がふとしたはずみにごろりとひっくり返って仰向けになった。あらわ
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