野寺坊
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どうしているのだろうか、と急に気になってな。直接聞いても埒があかないので、こうして調査に乗り出した」
「い、いつから」
「さっき始めたばかりだ」
奉が、ごくりと喉を鳴らした。
「初っ端からこんなドラマチックな展開とは…飛ばしてくるねぇ」
「え?え?」
次から次に繰り出される『非常事態』に脳がついていかない。オロオロする俺は奉に『きじとらが動くぞ、早く借りてこい』と促され、慌ててレジに走る。レジで『デブワゴン』が入りっ放しだったことに気がつくがもう遅い。バイト店員に『えっデブもいけるんすか??』みたいな目で見られる。お前も客の好みを一々覚えるんじゃない。
「…大変なことになったねぇ」
一言文句を、と思って奉の所に戻ると、奴は若干青ざめた顔で棚の隅で小さくなっていた。
「どうした?」
「あいつキ○ガイ★チンポハンター3借りてったぞ」
―――は??
「なんだそれ」
奉が無言でスマホを取り出し、何かを検索して俺の前にかざした。……乳丸出しのレオタードの女優が白目剥いて腿にスルメの干した奴を括りつけ、チンポ的な何かを握りしめて『マンセー』とか叫んでいるへんなジャケットが表示されていた。……初見の感想は『女優さん、大変だなぁ…』という、憐憫に似た何かだった。
「こ、こんな…よりによってこんな特殊なやつを…!」
「2012年、伊藤あずさ・細川まり出演。39歳の冴えないサラリーマンが毎晩のように『チンポハンター』とかいう女性の変質者に襲われる、という、悪夢っぽい内容のAVだ。いや、AVというか衝撃映像というか…」
しかし詳しいなこいつ。借りた事あるだろう。
「『3』まで出ているねぇ…」
「そんなに需要あるのか!?こ、こんなので抜く奴」
「きじとら、店出るぞ」
そうだ、チンポハンターに気を取られている場合ではない。何というかこう…大変なことになっている気がする。俺たちは十分距離があいたのを確認してから店を出た。
きじとらさんはゆっくりとした足取りで、駅前のスーパーに入っていった。あの空色のカバンに入っている『もの』の事を考えると、頭を掻き乱したくなるが堪えた。
「あいつ、平然と借りたねぇ…スーパーで大根選ぶのとちっとも変わらない感覚で借りたねぇ…」
菓子棚の陰から青果コーナーのきじとらさんを眺めつつ、奉が呟いた。珍しく、羽織りを脱いで鞄に押し込んでいる。尾行に向かない出で立ちであることは自覚しているのだなぁ。
「あんな大人しそうな顔をして、とんでもない変態女かもしれないねぇ…」
小さい声で『それもアリだねぇ…』と呟いたのを俺は聞き逃さなった。
「アリじゃねぇよ…ちょっとしたアブノーマル行為ならギャップの範疇だが、よりにもよってチンポハンターだぞお前。身内にそんなアグレッシブな変態がいて
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