アポカリプス
[1/23]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
新暦67年9月23日、20時00分
この夜、ブレイダブリクの外れで一つの小さな葬儀が行われた。プレシア・テスタロッサの葬式だ。
新たに調達された木製の棺桶に遺体を移された彼女は、そこの火葬場で荼毘に付した。もう少し関係者を集める時間があっても良かったのではと思った者もいたが、もし遺体をアンデッド化させられでもしたら苦痛が倍化するのは必然である。故に、早めに埋葬してあげるのが本人の尊厳を守ることに繋がる。その物悲しい光景を娘とその友人、関係者たちは無言で見届けながら黙祷した。
なお、遺灰は砂漠に撒くか、海に撒くか、それとも別の世界で埋葬するか選ぶ事になっていた。しかし別の世界に行って戻る余裕は無いため、フェイトは「母の遺灰は海に撒いてほしい」と答えた。本当ならミッドチルダの故郷に眠らせてあげたいと思っていたが、あまり悠長にしていられないこの状況では仕方なく、むしろこうして葬儀を行う時間をもらえただけ彼女は感謝していた。
「ごめんね、でも時々会いに来れば納得してくれるよね……? 母さん……最期に傍にいられなくてごめん。でも……ありがとう、私を生んでくれて、私を愛してくれて。最後だから改めて言うけど……ずっと大好きだったよ。大丈夫、姉さんは必ず私が助けるから、母さんは何も心配しなくて良いから……。だから……おやすみなさい」
彼女の呟きは弔いの炎と共に夜空へと登っていく、その想いが届くと願いながら。夜の砂漠の冷たい風は、悲しみに濡れる彼女の頬を優しく撫でた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
新暦67年9月24日、7時07分
「これで……完成だ……!」
一晩借りたウルズ宮廷の研究室で、マキナはようやく出来たと言いたげな面持ちで真っ白に淡く輝く薬を手に掲げる。それは未完成だったアンデッド化の抑制薬の効果をはるかに上昇させたもので、理論上では完全にアンデッド化する前に刺せば、一週間以内に太陽を浴びることで元に戻れるという、マキナの魂が込められた調合薬。兆候が出る前というラインと比べれば、格段に助けられるタイムリミットが破格に伸びた救世の薬品……銀河意思ダークによる吸血変異から人類を救える、ヒトの生み出した光である。とはいえ完全にアンデッド化した者に刺してもアンデッド・リニスの二の舞になるのだが、それでも暗黒物質に抵抗力が無い人間の命を数えきれないまでに救える革新的な薬であるのは事実だった。
「おめでとう、マキナちゃん……! わ、私……なんか涙が……!」
「なんで作った私より感動してるのさ、シャマル……」
「だ、だって……こうしてマキナちゃんと一緒に作り上げられたのがすごく……すごく嬉しくて……! 先代主の事とか、サバタさんの事とか、ニダヴェリールの事とか、色々あって……私、ずっと責
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ