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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百一話 ある仮説
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力してフェザーンを成立させたと知れば尚更だろう。
自由惑星同盟がフェザーンの成立に関わっている、有り得ない事だと皆思うだろう。だが俺は有り得たと思っているし、それ以外ではフェザーンの成立は無かったと思っている。
帝国暦三百三十一年、ダゴン星域の会戦が起きた。同盟が大勝利を得たが、帝国はこれに対して直ぐには反撃が出来なかった。何故なら当時帝国は非常に混乱していたからだ。暗褐色の六年間だ。陰謀、暗殺、疑獄事件が多発し帝国は内部分裂しかねない状態になった。
帝国暦三百三十七年に即位したマクシミリアン・ヨーゼフ帝が同盟と戦わなかったのは、帝国の再建が最優先事項だったからだ、外征をしているような余裕など何処にも無かった。
しかし、全く何もしなかったかと言えばそうではない。当時の帝国はイゼルローン回廊以外に同盟領に攻め込むルートが無いかを調査したのだ。調査記録、第三十八〜第五十九航路探査船調査記録によれば、帝国は当初イゼルローン回廊の近くに使える通路の有無を調査している。
ただマクシミリアン・ヨーゼフ帝が内政を重視した所為かそれほど頻繁には出していない。積極的になるのは次のコルネリアス帝になってからだ。そして調査は徐々にフェザーン方面にと移ることになる。
一方地球だが、彼らは同盟を利用して地球の復権を考えただろう。そして同盟と秘密裏に接触する事を考えた……。当然だが軍と同じところで航路探査などするわけが無い。おそらく彼らは最初からフェザーン方面で調査を始めたはずだ。それが彼らに幸いした。
彼らが何時フェザーン回廊を、フェザーン星系を発見したのか……。おそらくは帝国暦三百五十年代後半になってからだと思う。地球がフェザーンという交易国家を創り、帝国と同盟を共倒れさせようと考えたのはこの時期のはずだ。
帝国暦三百五十九年、コルネリアス一世の大親征が起きる。この戦いで同盟軍は二度に亘って大敗北を喫した。オーディンで宮中クーデターが発生しなければ宇宙はコルネリアス一世によって統一されていただろう。
大敗北を喫した同盟は恐慌に駆られただろう。軍の再建に必死になったはずだ。そんな時に地球はレオポルド・ラープを使って同盟政府に秘密裏に接触したのだと思う。イゼルローン回廊以外にも使える回廊が有ると言って……。
悪夢だ、当時の同盟政府にとっては悪夢以外の何物でもなかったはずだ。もし帝国が両回廊から攻め寄せてきたらどうなるか? ただでさえ敗北によって少なくなっている兵力をさらに分割しなければならない。当然勝ち目は低くなる。
フェザーンに基地を造る? それも無理だ、守るだけの戦力が無い。或いは同盟領の奥深くにまで誘い込む? だとしても何処で敵を迎撃するか……。
頭を抱える同盟の為政者に対してラープは中立国家フェザーンを創る
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