第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#21
PHANTOM BLOOD NIGHTMARE? 〜Urban Strafe〜
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【1】
スコープ越しに視る、ソノ 『世界』
標的の命はいつでも手中に有り、
銃爪を引けば容易くソレを終わらせる事が出来た。
冷たい時間、凍った体感、死の弾丸だけがもたらす生の実感。
しかし、静止したその空間の中で、 “アノ方” だけが自分の存在に気づいた。
何人をも逃れるコトは出来ない照準の先で美しく微笑み、
その次の瞬間には背後に立たれていた。
神など信じない自分に、否応なくその存在を想起させた全能感。
ソレ以来、凍っていた自分の時間が動き出した。
今までの人生など、アノ方に出逢ってからの日々に較べれば死んでいるも同然だった。
ジョンガリ・Aはコード・ネーム、本当の名前は知る術もない。
しかし消えた 「過去」 に何の意味が在る?
少しでもアノ方の御力になれるのなら、
自分は記号 (ジョンガリ・A) で構わない。
「……」
物音一つ、微かな呼吸音すら聞き取れない閉塞した空間の中で、
男は骨格で支えた銃身に決意を秘めた。
先刻の狙撃、弾丸は明確に急所へ命中したのに標的を貫かず、
(見当外れの方向ではあるが)反撃も許した。
やはり、ティリエルという娘が言っていたように
『スタンド使い』 とは別の異能者 “フレイムヘイズ” とやらは
相当に頑強な肉体を持っているらしい。
ならば脳天を撃ち抜くまでと精密に第二射を行ったが、
すんでの所で花京院の機転に阻止された。
標的が逃れた屋内、自分の技術とスタンド能力ならば十二分に追撃は可能だが
その男、ジョンガリ・Aは長年の経験に拠り敢えて堅忍を選択した。
手負いの獲物を嬲ろうというサディスティックな気持ちからではない、
死角だらけの屋内に於いても実行される精密射撃、
その “不自然さ” から自身の 『スタンド能力』 が露見するコトを
彼は警戒したのだ。
初弾が命中したあの女は兎も角
共にいる男、花京院 典明には推察される怖れがある。
エンヤ、ヴァニラ、そして疎ましくもアノ方にすら認められた実力者。
故にあの男へ与える情報は出来るだけ抑えるべき、
最善 「跳弾」 くらいに想わせておいた方がこちらも都合が良い。
スタンドバトルに絶対はないが、実質、一流と二流の使い手を分ける境界は此処。
どれだけ自分の能力を熟知しているか、そしてソレを漏らさないようにするか。
その事実を明確に認識するコトがスタンドの 「練度」 に繋がっていき、
逆に自身の能力を優れていると過信する者は結果的にそのスタンドを使いこなせず
他愛もない事で敗れたりする。
ジョンガリ・Aの持つスタンド 『マンハッタン・トランスファー』 は
破壊力もスピードも無きに等しい能力だが、ソレ故に怖ろしい能力と云える事は
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