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「晩秋の月だけが。」
月夜の籠城戦
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、、
…違いますか?」


「…う。」

「う?笑
猫殿、殺して下さい。
そなたと、貴方と…、
同じ場所に行きたい。」




本丸にも火が付いた様だ。
叫び声と慌ただしい足音、
敵兵を押し止め様と
お味方が必死になって…、



それは遠い場所の出来事の様に。



「姫様、殿の元に参らねば、」

「…私を、
置いて行きますか?」

「……。」


燭台に照らし出された、
姫の不安げで、緊迫した表情が
あまりにも美しく、

思わず目を逸らせた。





…煙が、、、、、



「姫、ここも刻の問題、
ならば、殿の元に、御一緒に、」

「私を、殺して。」

「姫、今は、」

「今がその時。
猫殿は、来世を信じますか?」

「…信じます。」

「ならば、
来世では、夫婦になりたい。
姫などと言う身分は邪魔です。」

「笑、解り申した、
来世ではきっと、必ず。
貴女をきっと、見つけます。」




火の手が…、、




薙刀を持った侍女が
駆け込んで来る、

「姫様!!二の姫様が!!
二の姫様、ご自害!!」

「なんと!!」

思わず立ち上がり身震いする姫、

「早う、お逃げ下さいませ、
敵の者が姫様を、
きゃー!!!!!!!」


「見つけたぞ!!!!!
貴様!!!その女を寄越せ!!
山野越前守の一の姫だな?!」

「猫殿だ!!
猫、おのれ!!
裏切り者めが!!!!」

「見つけたぞー!!
姫君と裏切り者じゃー!!」

「ああ、猫殿!!」

「姫!!!!」

「猫殿!!早く!!!
早く、私を!!!!猫殿!!!猫殿!!」












北遠の名も無き山城は
落城した。
山野越前守親子は
ある日突如として
この地の領主を裏切り滅亡した。


その経緯は誰も知らない。




いや、晩秋の満月だけが
知っている。












…テーブルの上には
氷の溶けたグラスと、
空になった焼酎のボトル。



女が酔い潰れた客に
優しく呼び掛ける。


「猫さん、猫さん、
ちょっと猫さん、猫殿っ!!!笑」

「…へ?」

「もう、
いい加減に起きて下さいな?」




「…あれ??山野は??坂下は??」

「とっくに帰りましたよ?笑」





女が近付いた時、
ふと、
懐かしい香りがした。


「…里香姫?」

「あら??笑
私、本名、教えましたっけ?ママと私で
送って行きますからね?

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