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ソードアート・オンライン〜黒の剣士と紅き死神〜
外伝
外伝《絶剣の弟子》G
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年の半ば頃だったか。当時、席が近くで周りのクラスメイトも互いに仲の良い人たちだったので紺野さんとも自然と話すようになったのだ。

 だが、彼女と兄弟姉妹の話をした事実はない。相手に対する基本的な知識として、紺野さんには双子の妹がいるということを知っていた。紺野さんのような姉が欲しいという考えはあったが、それを口にしたことはない。
 彼女は知るはずのないことを知っている。
 自分を取り巻く泥が、密度を増した気がする。さっきよりも動きにくく、息が苦しい。

「南君?」
「……僕は……俺は……君を見捨てた」
「え?」

 きょとん、と首を傾げる紺野さん。景色が歪んで、すぐに元に戻る。
 いや、違う。周りにはクラスメイトや他のクラスの人たちがいっぱいだ。
 皆んなが、あからさまに紺野さんを汚いものを見るかのような眼差しで見ている。昨日まで、彼女の周りには人がいっぱい居たのに、今は誰もが彼女を避ける。
 俺は今度こそ間違わないと強く思い、足を進めようとした。しかし、足は鉛のように重く酷い倦怠感に見舞われていた。

「光君」

 ぞわり、と首の後ろの毛が逆立つ。この世に生を受けてから最も近くで聞いて来た声。俺の意思とは関係なく、僕に言う通りの行動を強いる傀儡師の声。

「あの子に近づいちゃダメよ?悪いバイキンを持ってるんだから。休み時間になったら必ず手を洗ってうがいをするのよ。あの子が触ったものに触ったかもしれないし、吐いた息にバイキンがいるんだから」
「あ……ぁ……っ……」

 首を振って逃れようとするも、耳から脳へ酷く不快な感覚とともにそれは刻まれていく。毎日、毎日、その言葉を刻まれた。カラクリ人形でしかない僕はその通りにしか動けない。

「南君……」
「っ??」

 彼女の声はとても弱々しくて、そんなこと一度だって無かったのに、縋るような声で。

「こんーーーっ??……ぁ……っ??」

 声が出ない。必死に、喉を震わせようとする。しかし喉は何かがつっかえたように動かない。
 彼女は大きな人の円に囲まれながら、どんどんと離れていく。

「ーーーーー」

 それでも、彼女の口の動きは読めた。確かに言った。そう……あの時も、言っていた。芯の強い、彼女が唯の一度だけ漏らした、弱音を。僕は、僕だけは聞いていた。聞いていて、何もしなかった…………






 ーーー酷い夢を見た割には目覚めは穏やかだった。ただ、体は酷く怠く寝汗もびっしょりとかいている。ひとまず気合を入れて起き上がり、汗を流す。その間に思い出したことを整理する。
 俺はかつて紺野藍子さんという女の子と知り合いだった。その人は今、俺がお世話になっているユウキさんのお姉さんだ。昨日の話の限り、藍子さんはもう亡くなっている……原
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