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Three Roses
第二十一話 地位と力その九

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「子をもうけることが出来なかったのだ」
「あの方のみになりましたが」
 司教はここでは無念そうに頭を垂れて言った。
「男の方は」
「そうなったな」
「嫡流では」
 分家筋はいる、そちらはこの国にもそれなりにいて各国にもエヴァンズ家の血を引く者は決して多くない。
 だが、だ。それでもなのだ。
「あの方だけです」
「そうなってしまったな」
「嫡流の男子の方はまことに」
「早世だな」
「はい、代々」
「そして遂にか」
「あの方だけになり」
 そしてというのだ。
「最早」
「王子はな」
「私もそう思います」
「ならばだ」
「次の王はですね」
「二人なれる者がいる」
 太子の目がここで光った。
「わかるな」
「はい、そのお二方がどういった方々かは」
「だからこそだ」
 それ故にと言う太子だった。
「我々は動かなくてはならないのだ」
「その通りですね」
「一人だったらよかった」
「左様ですね」
「妃だけだったならな」
「しかしそうはならず」
「世の中は思い通りにならないものだ」
 太子は司教にこうした考えも述べた。
「そう簡単にはな」
「思い通りにするには」
「動かなければならない」
「自らな」
「神は自ら助けるものを助けられる」
 こうも言った太子だった。
「それ故にだ」
「我々も動くべきですね」
「その通りだ、だからだ」
「動きそして」
「願いを適えるのだ」
「軍と宮廷を抑えたので」
「この二つの力を存分に使いだ」
 そのうえでというのだ。
「手に入れるぞ」
「わかりました、それでは」
「オズワルド公は今はいないが」
「はい、軍務卿のお仕事で」
 大臣のそれの為にだ。
「今は王都におられません」
「港の視察に行ったな」
「海軍の主力がいる」
「そうだな、ではだ」
「公爵が戻られたら」
「その時にあらためて三人で話してだ」
 太子と司教、そしてオズワルド公の三人でだ。
「そのうえでこれからのことを決めるが」
「今は、ですね」
「我々二人で動こう」
「常に動きべきですね」
「立ち止まってはならない」 
 その目を鋭くさせてだ、太子はこうも言った。
「常にだ、だからだ」
「我々だけでも」
「動こう、妃を次の王にする為にな」
 太子は軍と宮廷を旧教徒達即ち自分達のものとしたことで今はよしとした、そのうえでその二つの力を背景にしてだった。
 マイラを次の王にすべく動いていた、特に宮廷においてだった。
 旧教徒の者達の数はそのままだったが王の周りに集められだした、マリーはその状況を見て側近達に言った。
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