第二十一話 地位と力その八
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「これは痛かったな」
「予算を握られたことは」
「出来れば全て握りたかった」
「軍隊、宮廷と」
「財政もな、しかしそれは適わなかった」
太子はこの現実を淡々として話していった。
そのうえでだ、司教にこうも言ったのだった。
「だがこの二つを手に入れたことでだ」
「これからはですね」
「ことを進めていく」
「そうされますか」
「そうするしかない」
するのではなく、というのだ。
「今はな」
「では」
「この二つの力を最大限に使う」
やはり太子の言い方は淡々としていた、残念と言いながらもそこには絶望も焦燥も困惑もない。ただ偈実を見ているだけだった。
「そうしていくとしよう」
「それでは」
「この二つだけでも相当に大きい」
「このことから」
「妃を女王にする為に進めていこう」
「わかりました」
「そして妃だが」
太子は司教にあらためて問うた、今度は自身の妻であり神輿である彼女のことを。
「今日はどうしたのだ」
「今はどうもです」
「体調が優れないか」
「そうです」
「朝は元気だったが」
「そこから風邪をひかれたそうで」
「風邪か、大したことはなくともだ」
それでもだというのだ。
「用心が必要だ、ゆっくり休む様にとだ」
「お伝えさせて頂きます」
「それではな」
「それと王ですが」
現王についてだ、司教は声を小さくさせてだった。太子に囁いた。
「実は」
「何があった」
「はい、体調が優れぬ様です」
「そうか、やはりな」
「お気付きでしたか」
「以前から若しやと思っていた、いや」
太子は言葉を訂正した、実はなのだ。
「そうだと確信していた」
「以前から」
「そうだった」
まさにというのだ。
「王は体調が優れないとな」
「そうでしたか」
「エヴァンズ家は代々早世だな」
「はい、実は」
「男の方は皆早く死ぬ」
「開闢以来」
「王もだ」
現王もというのだ。
「この家の男の方であるからな」
「お命は、ですか」
「そう見ている」
「左様ですか」
「もう王に子は生まれない」
太子は断言した。
「以前からそうだったが」
「マリー様がおられますが」
「しかも島国に嫁いだあの姫君以外にはだな」
「お子はおられません」
「そうだな、おそらくだが」
「お身体が優れなかったので」
「以前からな」
それが為にというのだ。
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