13. 友達が帰る日(前) 〜電〜
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重い瞼がなんとか開く。昨日の私は泣き疲れて眠ってしまったようだ。天井を見る。私の部屋だ。誰かが私の部屋に運んでくれたらしい。おぼろげな記憶の中で、誰かにおんぶされたような気がする……誰だろう?
自分の布団の中に、もう一人誰かがいることに気付いた。自分の頭を真上から右に向ける。
「……集積地さん?」
私の横では集積地さんが、とても穏やかな寝顔で眠っていた。メガネを外した優しい顔の集積地さんは、いつかのようにとってもキレイで……とってもつんつんしたくなる。
「……」
「スー……スー……」
自分が置かれたこの状況の理解よりも、集積地さんの寝顔への好奇心を優先することにした。あの日のように、私は集積地さんのキレイなほっぺたをつんつんすることにする。
「つんつん……」
「スー……スー……」
数回つついたところで、少しずつ集積地さんのほっぺたが赤くなってきた。なんとなく分かる。集積地さんは今、狸寝入りをしているようだ。鼻がぴくって動いたし。
「つんつん……つんつん……」
「んー……むむ……むー……」
よし。もう少しで我慢できなくなるだろう。電、これよりつんつん攻撃からむにむに攻撃に移行するのです。集積地さんのほっぺたをつまんで上に引っ張り、むにむにと揉みしだく。
「むにむに」
「んん……んむむむむ……ッ」
「むにーん。むにーん」
「……だあッ!!」
観念したようだ。集積地さんはカッと目を見開き、鬼のような形相で私をキッと睨んだ。あの時と同じでほっぺた赤いけど。
「お前はどうして……!」
「はいなのです?」
「初めて会った時から変わらず……ぷっ」
「……ぷっ」
「くくっ……なんで私のほっぺたをそんなにつっつく?」
「だって……ぷぷっ……ぷにぷにしてて気持ちいいのです……ぶっ」
「何が……ぷぷっ……気持ちいいだ……くくっ……」
布団の中で、二人で顔を近づけて笑う。昨日あんなに泣いたからだろうか。不思議と涙は出てこない。それよりも今は、集積地さんと一緒にいられるうれしさで胸がいっぱいだ。
「イナズマ、おはよう」
「おはようなのです」
今更な挨拶を交わす。なぜだか少し気恥ずかしい。うつ伏せになって枕に顔を埋めて、赤くなった顔を隠した。
「イナズマ。提督から聞いた」
「……」
「すまない。昨日はお前の気持ちをまったく考えてなかった」
「集積地さんは悪くないのです。……電がワガママだったのです」
そうだ。集積地さんが帰る場所はここじゃないんだ。ここは、私の友達の家じゃないんだ。私の家に遊びに来た友達は、いずれ、自分の家に帰る。
「集積地さんは電の友達なのです。でも、いつかは家に帰る日が来るのです」
「うん」
「だから集積
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