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テキはトモダチ
13. 友達が帰る日(前) 〜電〜
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動天龍ボイス再生機としていつの頃からか機能しているらしい。私の気のせいではなかったようで一安心だ。

 集積地さんは再度勇気を振り絞ってドアノブをひねり、ドアを開けていた。早くドアノブから手を離したかったからだろうか、少し強く開かれたドアは、ドバンと壁にぶち当たって大きな音をあげていた。

「だからもうちょっと静かにドアを開けなさいと何度も……」
「す、すまん……テンリュウが……」
「? 俺とドアに何の関係があるんだよ?」

 知らぬは本人ばかりなり。……天龍さんがドアノブ触ったらどうなるんだろう?

 執務室には相変わらず死んだ魚の眼差しの司令官さんと、その隣で大淀さんがパソコンを開いて何かをぱちぱち入力していた。ホント、集積地さんが帰るということ以外は、いつもの鎮守府と変わらない。

「司令官さんおはようなのです!」
「はいおはよう。集積地と天龍も」
「今日のお見送りの段取りを聞きに来たのです」
「ああ。……大淀、紙出してちょうだい」
「はい。かしこまりました」

 大淀さんがパソコンをマウスで操作し、何か書類を印刷していた。執務室のすみっこにある印刷機から一枚の書類が3部印刷され、それを私たちに配ってくれる。

「今日の外出の概要だ。このまま10時になったら出発する」
「ちゃんと電の名前も入ってるのです!」
「集積地からのたってのお願いだからな。まぁ言われんでも連れて行くつもりだったけど」

 ちらっと集積地さんの顔を見た。ほっぺたを赤くして、口笛を吹くそぶりをしていた。

「ひゅ〜……ひゅひゅ〜……」
「ちゃんと音が出てないのです」
「う、うるさいっ」
「んで悪いんだけど、集積地が乗るボートに俺も乗るから。ちょっと重いだろうけど、がんばって曳航してね」

 集積地さんは陸上型の深海棲艦だ。だからきっと集積地さんはボートみたいなのに乗って、私たちがそれを曳航する形になるだろうとは思っていたけど、司令官さんも来るのは予想外だった。

「司令官さんも来るのです?」
「ああ。こう見えて一応責任者だからね。こういう場には顔を出しとこうかなと」
「前線だぞ? 大丈夫か?」
「大丈夫でしょ。なぁ集積地?」
「大丈夫だ。私達は手出しはしない」
「だそうだ。大丈夫じゃない? 知らんけど」

 司令官さんの言い方はいつものこととして……集積地さんがそういうのならきっと大丈夫だろう。

「まぁ念の為に白旗は持っていっとこうか。お前らも、出発の時の武装は最低限にしなさい。護衛とはいえ、余計な刺激はしないに越したことはないからね」
「了解だ」「分かったのです」
「あとはまぁ……出発は10時厳守で。それ以外に何か質問はある?」

 私は特にないけれど……と思ったら、集積地さんがジャージの
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