13. 友達が帰る日(前) 〜電〜
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希望で一度執務室に顔を出すことになった。今日の出発の段取り確認のこともあり、私と天龍さんもそれにくっついて行くことにする。
「球磨は赤城と子鬼たちを待つクマ」
「分かったのです」
「球磨は見送りはしないクマよ? またいつか会えるクマ」
「そっか。……クマ、ありがとう。お前がちょくちょく子鬼たちの面倒を見てくれてたのは知ってる」
「あんなほっとけないナリをしてる子鬼が悪いんだクマっ。いいからさっさと行くクマ」
集積地さんと握手を交わした球磨さんは、そのままぷいっとそっぽを向き、私たちに背を向けて手のひらをピラピラさせていた。言葉の端々はとってもぶっきらぼうだったけど、私には分かる。球磨さんもさみしいんだ。だけど、集積地さんに余計な心配かけないように、わざとぶっきらぼうに答えてるんだ。だって。
「集積地」
「ん?」
「風邪ひいたらダメクマよ? またいつでも遊びに来るクマ」
「ああ。ありがとう。球磨も元気で」
「……クマ」
球磨さんは窓の外を眺めていたけど、窓に写った球磨さんの顔は、涙でくしゃくしゃになってたから。
鳳翔さんにも別れを告げた後、私たち3人はそのまま執務室に向かう。
「イナズマ」
「はいなのです?」
「……ん!」
「分かったのです!」
もちろん、二人で手を繋いで。もうすぐ離れ離れになるから、その分今だけはずっとくっついていられるように。
「お前ら、ホント仲いいな〜」
「「えへへ〜」」
執務室の前に着いたら、やっぱりヒビが入ったままになっているドアを叩く。昨日の私の盛大なノックのせいなのか、ちょっとヒビが大きくなった気もするが……
「とんとん。司令官さん、電なのです」
「集積地もいるぞー」
「俺も一緒だー」
「はーいおはよー。そのまま入っといでー」
私たちのノックに返事を返したのは、司令官さんの覇気のない声。変わらない。本当にいつもと変わらない鎮守府だ。
「集積地さん」
「ん?」
「ドアを開けて欲しいのです」
「私がか?」
「はいなのです」
ちょっと思うところがあって、集積地さんにドアを開けてもらうことにした。あることの確認なのだが……私に従い、集積地さんは頭にはてなマークを浮かべながらドアノブに手をかけ、ノブを回した。
「……うわっ!?」
「どうした集積地!?」
そしてその途端、集積地さんはドアノブから手を離してのけぞった。
「い、いや……なぁテンリュウ。お前、今別に何も言ってなかったよな?」
「だな。何も言ってねぇな」
「だよな……そうだよな……」
「?」
ドアノブに手をかけた途端、天龍さんのスゴミが聞こえるのは私だけではなかったようだ。このドアノブは、なぜか天龍さんの意識を吸収して自
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