13. 友達が帰る日(前) 〜電〜
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でもぞもぞしていたいけど、さすがにこうお腹が空くと……仕方がないので、起きて二人で朝ごはんを食べに行く。
「イナズマ」
「はいなのです」
もちろん、いつものように手を繋いで。
「じゃあ朝ごはん食べに行くのです!」
「ホウショウの朝ごはんも今日で終わりか〜……」
集積地さんはそう残念そうに言っていた。実は鳳翔さんは、集積地さんが一番最初に名前を覚えた人なんだそうだ。
「それだけお味噌汁が美味しかったんだよ」
そこは命の恩人として、冗談でも『お前だイナズマ!』と言って欲しかったのだが……まぁこればっかりは仕方ない。鳳翔さんのお味噌汁はそれだけ美味しい。
「おはよう!」
「おはようなのですー!!」
手をつないだまま、二人で食堂に入った。食堂内には、集積地さんが大好きなお味噌汁のよい香りが漂っていて、その香りを吸い込んだだけでお腹が空いてきた。
「ぁあ、電さんに集積地さん。おはようございます」
「鳳翔さんおはようなのです!」「おはようホウショウ!」
「ふふっ……息ぴったりですねぇ」
「「えへへ〜」」
鳳翔さんに私たちの仲を褒められ、二人して顔がほころんでしまう私と集積地さん。鳳翔さんが準備してくれた献立は、ご飯とお豆腐のお味噌汁、そして焼き鮭と玉子焼き。集積地さんが初めてここでご飯を食べた時のメニューだ。鳳翔さんから朝ごはんを受け取った私たちは、ご飯がのったお盆を手に、初めて二人でご飯を食べた時と同じ席に座った。
「変にこったものより、この方がいいのかなーと思いまして」
とっても優しい笑顔でそう言った鳳翔さんは、私たちがついたテーブルに熱いお茶が入った急須を持ってきてくれた。
「……毒は入ってないだろうな?」
あの時の再現のつもりだろうか。集積地さんがそんなことをつぶやいた。口から盛大にヨダレを垂らして、うつろな眼差しで朝ごはんを眺めながらだけど。
「うっく……」
「ぷぷっ……」
「ぅぅぅぁぁぁぁ……」
「ぷっ……鳳翔さん……」
「はい?」
「あの時の鳳翔さんの気持ち……今なら分かるのです……ぷっ」
「でしょ? ぷぷっ……」
「?」
やっとあの時の鳳翔さんの気持ちが理解できた。こんな『私、お腹が空きました!』『美味しそう!!』と全身で訴えかけているくせに、口では『毒は入ってないだろうな?』と精一杯の抵抗を見せようとがんばっている集積地さんのその姿は実に面白い。
ひょっとすると、こちらに『食べてもいい?』と確認するための儀式なのかもしれない……私の妄想の中で集積地さん、子犬になってたから。
「ぅぅぅぁぁぁぁ……」
「ぷぷっ……」
「?」
この状態の集積地さんにいつまでもおあずけを食らわせておくのも忍びない。
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