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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百話 辺境星域回復
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にしてガイエスブルクで敵を待つに違いない、そうは思わないか」
「……」
リッテンハイム侯が語りかけてくる。確かにそうかもしれない、しかし……。

「グライフス総司令官が行っても無駄だ、それでは彼らは一つにはまとまらない。一つにまとめるには犠牲が必要だ。私が行くべきなのだ、それだけの価値は有る」
「……駄目だ、そんな事は認められん」
犠牲……、卿を犠牲にするなど出来るはずが無い。此処まで一緒にやって来たのだ、わしを一人にするな……。

「ブラウンシュバイク公、公も分かっているはずだ。このままでは負ける、それも無様にだ。それで良いと言うのか?」
「……」

「それに、私が負けると決まったわけではない、上手く行けば辺境星域を取り戻せるし、負けても死ぬとは限らない、そうだろう」
「……」

グライフスを見た。彼は黙って首を横に振った。認めるなと言う事だろうか、それとも仕方が無いと言う意味か……。表情が切なげに歪んでいる、仕方が無いと言う事か……。

「私に万一の事が有った場合はサビーネを頼む」
「……分かった。だが必ず戻って来い、いいな」
「もちろんだ、死に急ぎはせんよ」
リッテンハイム侯が笑いながらおどけた……。



帝国暦 488年  1月20日 ガイエスブルク要塞   ウィルヘルム・フォン・リッテンハイム三世


「私は明日、辺境星域へ出撃する」
「……」
私の言葉にリヒャルト・ブラウラー大佐、アドルフ・ガームリヒ中佐が黙って頷いた。

ガイエスブルク要塞内に有る私専用の個室。その部屋は今重苦しい雰囲気に包まれている。ブラウラー大佐、ガームリヒ中佐、二人とも表情が険しい。自分達が何故呼ばれたのか分かっているのだろう。

「私は出撃するがお前達は此処に残る、意味は分かるな?」
私の問いにブラウラー大佐が答えた。
「……サビーネ様の事ですね」
「そうだ」

「おそらく私は戻っては来れまい。サビーネの事はブラウンシュバイク公にも頼んだが、公とて明日はどうなるかは分からぬ。万一の場合はサビーネを連れ、逃げるのだ」
「……」

「ヴァレンシュタインとの約束を憶えているな、ガームリヒ中佐」
「はっ。貴族達に渡すなと」
「そうだ、必ずサビーネをヴァレンシュタインに渡せ、そして陛下の下に連れてゆけ」
「必ず、そのように」

低い声でガームリヒ中佐が答えた。何処と無く思いつめたような表情だ。貴族達を欺き通せず、サビーネを攫われた事に責任を感じているのかもしれない。

「ブラウンシュバイク公もおそらくは同じ事をフェルナー達に言うに違いない。今の内から意識を合わせておけ」
「はっ」

「その後は降伏せよ」
「閣下!」
「私達は……」
「無駄死には許さん!」
口々に言い募ろう
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