12. 夕方5時 〜電〜
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ご飯を食べてからでいいんじゃないか? 急ぐこともないだろう?」
「善は急げなのです!!」
でなければ、集積地さんに涙を見られてしまう。
「じゃあ私も一緒に行くよ。元々私のことなんだし」
「いいのです! 今から食堂に行けば赤城さんと一緒に子鬼さんたちもいると思うのです! だから子鬼さんたちにこのことを伝えて欲しいのです!!」
ウソです。私はあなたと一緒にいたいです。ずっと手を繋いでいたいのです。
「……わかった。んじゃ提督への報告を頼めるか?」
「はいなのです。赤城さんや子鬼さんによろしくなのです」
集積地さんの返事を聞く前に、私は顔を見られないようにその場を走り去った。後ろから『おい!』という声が聞こえたが、聞こえないフリをした。
そのまま全力で駆け抜けて、執務室の前に来た。ヒビが入ったドアを元気よくノックする。音が『とんとん』じゃなくて『バキバキ』に近かったが気にしない。
「はいはーい。ノックはもう少し穏やかにねー」
「司令官さん? 電なのです!」
「あらこんな時間にめずらし。入っといで」
「はいなのです!」
ドアノブに手を駆けた途端に聞こえる天龍さんの『フフ……怖いか?』には目もくれず、私は勢いよくドアノブを回してドアを開いた。『ドガン』という音とともに開いたドアは勢い良く壁にぶち当たり、執務室の壁に傷をつけていた。
いつもの席で書類を眺める司令官さんと、いつもの席でパソコンを眺める大淀さんがいた。ドアの音にちょっとびっくりした様子の司令官さんだったが、私の姿を見てすぐに冷静を取り戻したようだった。
「……どうかしたの?」
いつもの覇気のない……だけど優しくて柔らかく感じる声で司令官が私に問いかけた。ダメだ。この声を聞いただけで目に涙が溜まってくる。今の私の両目はひどく敏感で、喉の奥はひどく痛みやすいようだ。
「集積地さんが、故郷に帰りたがってるようなのです!!」
「え……」
「……そうなの?」
「はいなのです!」
どうしてだろう? 大淀さんは私の報告を聞いた途端、口に手をあてて絶句していた。司令官さんの目もいつもの死んだ魚の眼差しだけど、少しだけ険しい。なんでだろう?
「……」
「……だから、集積地さんが帰れる手はずを司令官さんにととのえて欲しいのです!!」
「……」
「電もお手伝いするのです!」
大淀さんは、私をジッと見つめていた。心持ち、大淀さんの目がうるうるしてるように見える。司令官さんは何も言わず席を立ち、私に一歩一歩近づいてきていた。
「……何をすればいいのか、教えて欲しいのです!!」
「……」
「えーと……まず場所を聞けばいいのです?」
「……電」
「はいなのです! どうしたのです?」
私
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