邂逅
暗黒の闇
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精神平面の決闘で竜王にも屈せぬ意志力の喪失、虚脱状態を如実に示す蒼白な表情。
深層意識も激震を免れぬ強烈な衝撃、心理的打撃を受け脆弱な一面が露呈。
パロ聖王家の青い血を引く野心家は瞳を硬く閉ざし、辛うじて自尊心を掻き集めた。
億劫な仕草で頭を軽く振り、水晶を髣髴とさせる表示盤に呟く。
「セカンド・マスターは基本的に不要、か…了解した、勧告に従い直ちに退室する。
ファイナル・マスターに宜しく、と伝えてくれ」
( ファイナル・マスターへの伝言、承りました。
治療の推定時間は約20ザン、対象者の搬出時に施術後の経過と観察結果を報告します )
相手を思い遣る心情とは無縁の音声信号、冷酷非情な銀色の思考が精神平面に波紋を描く。
光り輝く水晶の壁が滑らかに割れ、左右に開き退出用の通路が出現。
アルド・ナリスは想定を遙かに超える不慮の事態に遭遇、半ば放心状態であったが。
古代機械の共同研究者と腹心の魔道師に支えられ、虹色に煌く水晶の部屋を後にした。
「レムスの奴が妙な書状を送って来やがったぜ、見てくれよ、ナリス様。
ちょっと見ただけなんだけどさ、何だか頭がくらくらして来るんだよな。
妙な小細工と踏んだけどよ、ヴァレリウスなんぞとは口も利きたくねぇ。
魔道師の連中にゃ何されるか分からねぇ、何か仕込んであんのかな?」
ヨナと別れ魔道師軍団の精鋭と共に閉じた空間を経由、ナリスが天幕に戻った直後。
ゴーラ軍の陣中を騒がせ興奮気味の最高指揮官、イシュトヴァーンが駆け込んできた。
「確かに何等かの魔力が放出されている様だが、この文書は焼き捨てて構わないよ。
植え付けた催眠暗示命令を発動させる文様か、鍵となる言葉が組み込んであるのだろう。
そなたに植え付けられた催眠暗示は無効、既に解除されているのだからね。
レムスには何も出来ないし、命令の内容も知らぬだろう。
そなたがどんな動きをする様に仕組んであったか、解析するまでもあるまい。
竜王の本体は本当に一時撤退を選択したと見えるが、どちらにせよ大した問題ではないよ」
「どうしちまったんだよ、ナリス様?
昼間とはまるで違う反応じゃねぇか、あんなに調子良さそうだったのにさ。
俺、何か悪い事したか?
もっとゆっくり、進まなきゃいけなかったのかな?」
パロ聖王家の正統後継者と古代機械が認める夢想家者、アルシス王家の遺児アルド・ナリス。
ゴーラ王は素っ気無い返事を素直に受け取り、力無い微笑を見せる盟友を心配そうに覗き込む。
「私も大丈夫だと感じていたのだけれど、思ったより疲れが溜まっていたのだね。
マルガから戻った後、急に具合が悪くなってしまったのだよ」
実際には肉体面の負担過重に非ず、心理的な打撃から立ち直る
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