第一章 天下統一編
第五話 御用商人
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津田宗及は意味深な笑みを浮かべた。噂とは何の噂なのだ。俺は彼の言葉が気になり問いただそうと思った。
「噂とは?」
「津田殿。用件を済ませたい」
俺が津田宗及の言葉が気になり聞き返すと、石田三成が会話に割り込んできた。彼の態度に俺は心の中で嘆息した。彼は俺の嘆息を気にする様子もなく話しを進めた。
「石田様、今日お呼びいただいた理由をお聞かせ願えますか?」
「津田殿、小出藤四郎の御用商人をお願いしたい」
「喜んでお引き受けさせていただきます。小出様、御用があれば私もしくは天王寺屋にお声掛けください」
津田宗及は俺に笑顔で答えた。
「津田殿、よろしくお願いします」
俺が津田宗及に頭を下げると石田が間髪入れず口を開いた。
「津田殿。早速で悪いが、明日にでも津田殿の使いの者を小出藤四郎の屋敷に寄越して欲しい。小出は戦の準備で買い付けたいものがあるのだ」
「かしこまりました。石田様、小出様の屋敷には息子を向かわせていただきます。小出様、息子にご入り用の物をご指示ください」
「それと小出の年貢米の売却をお願いしたい」
「売却される米はいかほどでございますか?」
「これに仔細を認めている」
石田三成は懐から二枚に折り畳んだ紙を取り出し俺に差し出した。それを俺は受け取ると津田宗及に近づき差し出した。津田宗及は紙を受け取ると読み始めた。
「千四百石になる。米の受け渡しは今回は豊臣家の倉から出す」
「三千五百俵ですか。米は幾らでも売れますので喜んでお引き受けさせていただきます。手数料は百俵につき金二分になりますが、今回は無料にさせていただきます」
津田宗及は笑顔で石田三成と俺を順に見て答えた。手数料をまけてくれることは正直な気持ち嬉しい。でも、損することは商人がするとも思えない。つい裏があるのでないかと勘ぐってしまう。
「米の値段が暴騰していると聞いた。津田殿、一俵幾らで引き取ってくれるのだ?」
石田三成は意味深な笑みを浮かべ津田宗及に言った。
「石田様には勝てません。そうですね」
津田宗及は姿勢を正し思案気な顔で考えだした。しばらくすると彼は考えがまとまったのか口を開いた。
「一俵辺り一両二分でいかがでしょう」
「それでは話にならんな」
津田宗及は石田三成の言葉に苦笑しながら「負けました」と呟いた。
「一俵辺り一両三分でいかがでしょう」
「小出藤四郎は北条攻め後に大名になるだろう。大名にな」
俺は石田三成の言葉に戸惑う。石田三成は二度「大名」と言った。今でも俺はある意味大名だ。ただ、石田三成の口振りは別の意味を持っているように感じた。その証拠に津田宗及は目を細めた。
仮に秀吉が俺を正真正銘の大名にする気持ちがあっても、俺
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