第一章 天下統一編
第五話 御用商人
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一人位家臣に加えたい。近江国生まれの石田三成に口を聞いて貰うのが一番だろうが、これ以上関係を深くしたくないので止めておこう。
「よし、今から津田宗及殿に会いに行く。藤四朗、お前もついてこい」
俺が石田三成のことを感心していると彼は俺に同行を促し部屋から出て行こうとした。
「津田宗及殿に会いに行く? 石田治部少輔様、堺に行くんでしょうか?」
俺は未だ仕事が終わっていない。仕事を途中で放り出すことを許さない石田三成が堺に行くと言ったことに違和感を覚えた。石田三成は憮然とした表情で俺のことを見た。
「堺に行くわけがないだろう。聚楽第に呼びつけている」
石田三成は「馬鹿め」と一瞥して部屋を出て行った。俺は彼の後ろ姿を睨みつけるが、俺は思い直して彼を追いかけた。何をしようと今の俺では損をするのは俺だからな。俺は胃が痛くなってきた。早く石田三成から解放されたい。
石田三成に連れられ俺はある部屋に入った。そこには二人の男が座っていた。一人は老人。もう一人は中年。二人に共通することは品の良さそうな雰囲気を漂わせていることだ。彼らは俺と石田三成の姿を確認すると両手を畳みにつけ体勢を前に倒し深々とお辞儀をした。
「津田殿、お待たせした」
石田三成は部屋に入るなり中で待つ人物に声をかけた。どちらが津田宗及なのだろうか。千利休と同じ茶人というのは知っているが年齢は知らない。俺は文化人にはあまり興味がないから詳しくない。
「石田様のお呼びとあれば何処へでも参らせていただきます」
石田三成に声をかけられ老人が体勢を起こし微笑みながら喋りだした。それに会わせて隣の中年も体勢を起こした。
俺が会話する二人を見ていると、津田宗及は石田三成の隣にいる俺に視線を向けてきた。
「津田宗及と申します。後ろに控えるは私の息子、津田宗凡です。堺で天王寺屋を営ませていただいております。以後、お見知りおきください」
津田宗及は俺に頭を下げた。それに会わせ津田宗凡も頭を下げた。
「ご紹介いただけますか?」
津田宗及は石田三成の顔を見た。すると石田三成は部屋の上座に進み腰を下ろした。俺は石田三成の左前に腰をかけた。
「津田殿、この者は小出藤四郎俊定という。私の与力だ」
「小出藤四郎俊定と申します。つい先日元服を終え関白殿下にお仕えすることになりました」
石田三成が俺の紹介を終えると俺は津田宗及に名乗った。
「小出様は小出播磨守様のご縁者でございますか?」
「はい。私は小出播磨守の一子、小出小才次の養子です。元は木下の家の者で、実父は木下孫兵衛です」
津田宗及は俺を見ながら眉を動かし驚きの様子だったが、直ぐに俺を興味深そうな顔で見た。
「噂は耳にしております」
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