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トシサダ戦国浪漫奇譚
第一章 天下統一編
第五話 御用商人
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五千石だから何人か与力を付けて貰って、備を編成することになるのだろう。または石田三成の備に組み入れられるかだろう。後者の可能性が高い気がする。
 俺は軍役帳を開きページをめくる。数ページ読んだ俺は言葉を失ってしまった。俺の軍役は戦闘員と後方支援の非戦闘員を会わせ三百八十人もいる。表高五千石なのに何でこんなに多いんだ。

「石田治部少輔様、これは私の与力の者達の人数を加味した人数なのでしょうか?」

 俺はやんわりと石田三成に軍役のおかしな点について指摘した。

「その軍役はお前単独の割り当てだ」

 石田三成は表情を変えずに淡々と言った。

「私の石高なら半分の百五十位が適正かと思います」

 石田三成は俺を見て口元に笑みを浮かべた。

「お前の言う通りだ。だが、お前の知行地はその軍役に堪えうる領地だ。年貢を使いきる位の気持ちで軍役に臨め。これは殿下の命である」
「それは本当なのでしょうか?」

 俺は疑念の目を石田三成に向けた。すると石田三成は真顔で俺を直視し口を開いた。彼の瞳は絶対零度の冷たさだった。俺は内心で「何でそんな目で見られないといけない」と思いつつ口を噤み我慢した。

「藤四朗、殿下が何のためにお前に態々旨味のある知行を与えたと思う。お前を遊ばせるために与えた訳ではない。お前を見込んで北条攻めで手柄を立てさせるためだ。失態を犯せば減知(知行を減らす)になると覚悟しておくことだ」

 石田三成は感情の籠もらない顔で俺を見た。その顔は「拒否する権利はお前にない」と言っていた。

「殿下のご期待に添えるように頑張ります」
「その言葉は殿下に伝えておく。ところで軍役の準備をするために商人の伝手が必要になるが、お前はお抱えの御用商人が既に居るか?」
「いません」
「殿下からその辺りの世話もするように仰せつかっている。お前に豊臣家と縁のある御用商人を紹介しよう」
「どなたでしょうか?」
「津田宗及殿だ」
「堺の商人の方ですね」
「その通りだ。藤四朗、堺商人をあまり信じてはいけない。彼奴等とは一歩引いて付き合う方がお前のためだ。深く関わりすぎると身を滅ぼすことになる。いいな」

 石田三成は神妙な表情で俺の顔を凝視した。俺が頷くと「それでいい」と目で語り頷いた。

「津田宗及殿にはお前の年貢米の一部を売却するつもりでいる。その金で彼から必要なものを買えばいい。その軍役帳を見ながら自分なりに考え必要な物を揃えてみろ。分からないことがあれば私に聞け」
「石田治部少輔様、年貢はどの位売るつもりなのでしょうか?」
「年貢米の二割でいいだろう。今は米の値段が急騰している。良い値段で売れるはずだ」

 石田三成が経済に強い理由がよく分かった。普段から時事に気を配っているのだろう。俺も近江商人を
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