第一章 天下統一編
第五話 御用商人
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までは詳しくなかった。年貢は五公五民が基準で小田原北条氏の四公六民が特殊な事例と考えていた。しかし、実際の戦国時代は重税全盛時代であることを自覚させられた。
「お前は北条征伐に従軍しなければならない。そのためには人・物・金を集めるため元手が必要になる。この時期、年貢は既に領主に納められている」
「確か。先任の領主は年貢の半分を新領主に残すものですよね」
石田三成は俺の指摘に頷いた。
「だが、その領主が滅ぼされた領主なら年貢はないだろうな」
石田三成が真顔で俺に言うので心配になった。最近、摂津国で反乱を起こした大名がいたとは聞かない。でも、俺が知らないだけかもしれない。
「問題のある領地を殿下がお前に宛がう訳がないだろう。お前の知行地は豊臣家の直轄領だった土地だ」
石田三成は憮然とした顔で俺を見た。
「私は何も考えていませんよ」
俺は平静を装い誤魔化した。
「豊臣家に年貢が納められている。だから、豊臣家の倉から新領主であるお前に年貢を渡す」
石田三成は俺を見て「理解したか」という目で見ている。
「石田治部少輔様、理解しました」
「年貢は七千石。その半分は三千五百石。これがお前の取り分になる。しかし、殿下が格別の計らいをしてくださった。お前に昨年の年貢を全て渡す」
「いいんですか」
俺は喜色の声を上げた。
「殿下の命である。私がとやかくいうことではない。殿下に感謝し北条攻めに励むことだ。北条攻めではお前は私の与力と動くことになる。よろしく頼む」
石田三成から聞き捨てならないことを聞いてしまった。俺は北条攻めでも石田三成と一緒に行動することになるのか。彼が俺の上官ということは忍城攻めに加わることになる。別名「浮き城」と呼ばれる忍城は関東七名城と呼ばれる堅城だ。戦国時代の名だたる武将達が攻め落とせなかった名城だ。上杉謙信も忍城を落とせなかった。俺は凄く頭が痛くなった。
「石田治部少輔様、初陣も経験していない若輩者ですがよろしくお願いします」
俺は出来るだけ笑顔で石田三成に頭を下げた。彼は大仰に頷いた。この先のことが本当に心配になってきた。
「言い忘れるところであった。お前に渡すものがある」
石田三成は綴じられた薄めの書類を懐から取り出し俺に差し出した。俺は書類を受け取り表紙を見ると軍役帳と書かれていた。俺は視線を上げ石田三成の顔を見た。
「それに備の模範的な編成を書いておいた。それを見て軍役に必要なものを集めるといい。近々、お前の知行地の名主達が挨拶に来るはずだ。その時に人を出すように指示しておけ」
備とは一万石以上の大名が編成できる部隊の単位で、一万石の大名なら一つの備を編成できると言われている。俺は
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