第一章 天下統一編
第五話 御用商人
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目を覚ますためだ。リク、身体を拭く物と換えの着物を用意してくれ。早く出仕しないといけない」
俺は身体を震わせたどたどしい足取りで母屋に向かう。リクは俺のことを心配そうに見ながらも、俺の命令に従い母屋の方に足早に向かっていった。
俺が母屋に辿り着くと半九郎が囲炉裏に火をつけていた。俺は火に吸い寄せられるように囲炉裏に近づいた。
「殿様、顔色が悪いですが大丈夫ですか?」
「半九郎、大丈夫だ」
俺は言葉少なく囲炉裏に両手をかざし暖を取った。凍える俺の身体に火が放つ熱が染み渡ってくる。ああ生き返る。俺は表情を和らげ、人心地しているとリクが手拭いと着物を持ってきてくれた。それを俺はリクから受け取ると身体を拭き、その場でいそいそと着替えた。
「リク、半九郎。行ってくる」
「朝飯はどうされますか?」
「暇が無い」
「これを持っていってください。握り飯と水です」
リクは俺に竹皮の包みと竹筒を差し出してきた。彼女の心遣いには感謝するが、悠長にそれを食べている暇はないだろう。だが、俺はリクに悪いと思いそれを受け取った。
「いってらっしゃいませ」
リクと半九郎から送り出され、俺は屋敷を慌ただしく出て行った。聚楽第に付くまで俺は何も考えられなかった。ただ、一心不乱に走り続けた。こんな時に日頃の鍛錬の成果を披露することになるとは思わなかった。
俺が聚楽第に到着すると案の定人気は少ない。少ないというより、ほぼ人影はない。時折、警邏の役人達が通り過ぎる位だ。俺は石田三成が俺に告げた出仕時間は正規の時間なのかと勘ぐってしまった。出仕の時間は昼四つ(午前十時)だったはずだ。義父がそう言っていた。しかし、昨日、俺が出仕した時、石田三成の部下達は既に仕事をしていた。違和感を感じていたが、石田三成は勤務時間前労働を強要しているのかもしれない。俺は石田三成への恨みを募らせながら歩く。その道すがら俺を行儀が悪いと思いつつ、歩きながらリクが作ってくれた握り飯をぺろりと平らげ、竹筒の水で喉の渇きを潤した。俺は右手で口を拭うと周囲を見回し急ぎ足で石田三成の執務部屋に向かった。
「藤四朗、早いな」
俺が石田三成の執務部屋に到着すると、この部屋の主が俺に声をかけてきた。石田三成は俺の顔を一瞥すると自分の文机に視線を落とし筆を走らせていた。俺は呆けた目で石田三成のことを凝視した。この男はこの部屋で生活をしているんじゃないかと思った。
「小出様、おはようございます」
俺は挨拶され条件反射で「おはようございます」と相手にいった。挨拶をしてきた相手を見ると中島だった。俺が部屋の中を見回すと俺を含めて三人しかない。
「小出様には感心させられました。明日は休みですから十分鋭気を養ってください」
中島は俺を心底
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