オタクの心は静かにひずんでいく
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ってそんなこと言わせるな! クズオタク!」
沸騰したヤカンのようにぷりぷりと怒る彼女だが、店内では華麗な立ち振る舞いをするお姉さん的ポジションだ。
明「店とここじゃ雰囲気変わるな。お前」
ちはる「調子狂わされっぱなしっ……ほんと、なんでこんな奴が気になるの……」
明「……はっ? お前俺のこと」
ちはる「違う! そうじゃない!」
彼女の顔は真っ赤であった。
シュリンク作業に戻りつつ、本郷は手を動かしていく。
明「なぁ」
ちはる「はい、なに?」
明「オタクっていつまでも続けていけるって思うか?」
その言葉にちはるは少し考えるように天井に視線を向ける。
ちはる「逆に聞くんですけど、本郷さんはオタク辞めないんですか?」
明「やめる? なぜだ?」
ちはる「ほかに好きなものできたとか、例えば彼女とか」
明「俺の嫁は家にいる」
ちはる「誰もあなたの抱き枕について聞いてない」
明「仮にできたとしても、俺の趣味を理解できる者はオタクしかいない」
ちはる「そっか、あなたならオタクな彼女と付き合えそうですもんね」
彼女は少し安堵したかのような溜息をつく。
明「どうしてそこで三次元の女を出した」
ちはる「そういうので辞めちゃうんですよ。そもそもオタクが根暗とかキモいって相当過去の話です。普通ならモテるくらいですよ」
歴史的に言えば2010年にもなると、アニメや漫画趣味が貶されることなどなくなって、今となっては主流へと変わっているのだ。
恋人だって出来るし、クリエイターとなれば賞賛の嵐だ。
明「そうだな、俺のようなドス黒い感情をもって入ったやつらなどいないのか」
ちはる「なんですかそれっ! おもしろい!」
身を乗り出すちはるに、本郷は微動すらしない。二次元に生きる男は違う。
明「モテない男ってのはだな」
ちはる「本郷さんがそれ言うのおかしいですよ。その、趣味は深すぎですけどいい男性だって思いますよ?」
明「だからお前、俺に……」
ちはる「ちがいますから! ちがいますからね!」
彼女は手をぶんぶんと振る。
明「じゃあ、昔のオタクってどうなると思う?」
ちはる「そうですね……辞めちゃうのがほとんどじゃないですか?」
社会人になればおのずと時間がなくなり、フェードアウトしていく。
ただの一般人へと戻る。
それが嫌なら非正規か、時間の融通の利く仕事に就くしかない。
明「だが、辞められないやつらはどうなるんだ?」
ちはる「えー……今の作品についていけなくなったら……やめるとか」
本当にそうなのか。本郷はそうではないと思っていた。
明「オタクを続けていくというのは難しいものだな」
ちはる「趣味なんですから、そこまで入れ込む人は少ないって感じじゃないですか?」
彼女の言葉に本郷は少し苦笑いを浮かべる。
明「ああ、
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