暁 〜小説投稿サイト〜
テキはトモダチ
11. あなたと空を駆け抜けたくて(後) 〜赤城〜
[7/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


 右足をあげ、タラップにひっかけた。子鬼さんは今、左足だけ海面につけている状況だ。あとは左足。それさえ持ち上げてしまえば……

「持ち上げてください!!」
「行け子鬼!! 妖精ももう上げろ!! 上げろ!!!」

 天龍さんも一緒になって叫ぶ。大丈夫。妖精さんは分かっている。妖精さんが機首を上げた。

「そのまま行ってください!! 相棒を空に連れて行ってください!!!」

 タラップにかけた子鬼さんの右足が落ちそうだ。左足が海面から離れない。たまらず叫ぶ。お願いします。

「上げてください! 飛んでください!!」

 そのまま持ち上がってください。

「キヤァアアアア!!!」
「行け! アカギのがんばりに応えろ!!!」

 妖精さんが歯を食いしばって必死に操縦桿を握り、機首を持ち上げようとしているのが伝わった。お願いします。私の相棒に美しい世界を見せてあげてください。

「お願いします!! 一航戦の底力を見せてください!!」
「キヤァァァアア!!!」
「飛び立ちなさい!!!」

 子鬼さんが左足を持ち上げ、タラップにかけた。妖精さんの操縦桿が軽くなった。機首が上がり、高度が上がる。プロペラ音が強くなり、スピードが上がった。

「そのまま上がりなさい!! 私たちの世界に来なさい!!!」
「キヤァァアアアア!!!」

 『ふわっ』という擬音が似合いそうな動きで、子鬼さんと戦闘機は持ち上がった。

「……新しい一航戦の仲間が増えましたね」

 鳳翔さんの温かい声が耳に届いた。子鬼さんをタラップにひっかけてぶら下げた戦闘機は、そのまま旋回しながら空高く舞い上がり……

「やったのです! 子鬼さんがお空を飛んだのです!!」
「ありがとう……アカギ……」
「ハハッ……すげーな姐さん……」
「さすがは一航戦だクマー!」

 そして私たちの頭上高くを飛び続けていた。演習場を飛び出した戦闘機と子鬼さんは、鎮守府の敷地内をゆっくりと飛びつづけ、そして高い高度を保ったまま演習場に戻ってきた。

 私は捉えた。妖精さんが、私と子鬼さんに向かって敬礼をしながら操縦桿を巧みに操って、子鬼さんを振り落とさないように戦闘機を操っている姿を。そして、子鬼さんのつぶらな眼差しには、私が見せたかった美しい世界が一杯に写っていることを。

「キャッキャッ!!」
「ようこそ……私たちの世界へ……」

 鋭敏になっていた私の感覚の最後の残滓が、日没が近い時刻であることを告げた。少しずつ演習場がオレンジ色に照らされ始め、戦闘機と子鬼さんはその夕日の中で大空を駆け抜け続けた。

「あ……」

 集積地さんが、夕焼けに照らされた海をじっと眺めていた。戦闘機は子鬼さんをぶら下げたまま演習場を再度抜け出
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ