11. あなたと空を駆け抜けたくて(後) 〜赤城〜
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」
右足をあげ、タラップにひっかけた。子鬼さんは今、左足だけ海面につけている状況だ。あとは左足。それさえ持ち上げてしまえば……
「持ち上げてください!!」
「行け子鬼!! 妖精ももう上げろ!! 上げろ!!!」
天龍さんも一緒になって叫ぶ。大丈夫。妖精さんは分かっている。妖精さんが機首を上げた。
「そのまま行ってください!! 相棒を空に連れて行ってください!!!」
タラップにかけた子鬼さんの右足が落ちそうだ。左足が海面から離れない。たまらず叫ぶ。お願いします。
「上げてください! 飛んでください!!」
そのまま持ち上がってください。
「キヤァアアアア!!!」
「行け! アカギのがんばりに応えろ!!!」
妖精さんが歯を食いしばって必死に操縦桿を握り、機首を持ち上げようとしているのが伝わった。お願いします。私の相棒に美しい世界を見せてあげてください。
「お願いします!! 一航戦の底力を見せてください!!」
「キヤァァァアア!!!」
「飛び立ちなさい!!!」
子鬼さんが左足を持ち上げ、タラップにかけた。妖精さんの操縦桿が軽くなった。機首が上がり、高度が上がる。プロペラ音が強くなり、スピードが上がった。
「そのまま上がりなさい!! 私たちの世界に来なさい!!!」
「キヤァァアアアア!!!」
『ふわっ』という擬音が似合いそうな動きで、子鬼さんと戦闘機は持ち上がった。
「……新しい一航戦の仲間が増えましたね」
鳳翔さんの温かい声が耳に届いた。子鬼さんをタラップにひっかけてぶら下げた戦闘機は、そのまま旋回しながら空高く舞い上がり……
「やったのです! 子鬼さんがお空を飛んだのです!!」
「ありがとう……アカギ……」
「ハハッ……すげーな姐さん……」
「さすがは一航戦だクマー!」
そして私たちの頭上高くを飛び続けていた。演習場を飛び出した戦闘機と子鬼さんは、鎮守府の敷地内をゆっくりと飛びつづけ、そして高い高度を保ったまま演習場に戻ってきた。
私は捉えた。妖精さんが、私と子鬼さんに向かって敬礼をしながら操縦桿を巧みに操って、子鬼さんを振り落とさないように戦闘機を操っている姿を。そして、子鬼さんのつぶらな眼差しには、私が見せたかった美しい世界が一杯に写っていることを。
「キャッキャッ!!」
「ようこそ……私たちの世界へ……」
鋭敏になっていた私の感覚の最後の残滓が、日没が近い時刻であることを告げた。少しずつ演習場がオレンジ色に照らされ始め、戦闘機と子鬼さんはその夕日の中で大空を駆け抜け続けた。
「あ……」
集積地さんが、夕焼けに照らされた海をじっと眺めていた。戦闘機は子鬼さんをぶら下げたまま演習場を再度抜け出
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