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テキはトモダチ
11. あなたと空を駆け抜けたくて(後) 〜赤城〜
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れを追いかける子鬼さんの動きのすべてを受け入れなさい。あなたの仲間の動きのすべてを受け入れ、そして捉えた射撃を放ちなさい」
「……わかりました」
「頑張りなさい赤城。あなたたちの作戦遂行、楽しみにしています」

 鳳翔さんの優しい指摘はきっと的確だ。そのアドバイスはすべてが腑に落ちた。私は再度自分の立ち位置に戻り、そして戦闘機の矢を取った。

 私の相棒。今度こそ、あなたを大空に送り出します!

「子鬼さん! 行きますよ!!」
「キャッキャッ!!」

 妖精さん。一航戦として、私とともに子鬼さんを大空に送り出しましょう!

 静かに目を閉じ、そして開く。

「……」
「なんか……寒くなったのです?」
「……アカギの周囲の空気が変わったな」

 ギャラリーの声が次第に遠のいてきた。戦闘機の矢をつがえ、弓を引き絞る。視界が次第に狭まる。世界が徐々に狭まり、私のみが存在する世界となった。

「……」

 そのままさらに世界を尖らせ、そして拡げる。風のうねりが白い線となって見える。私の背後の景色が見える。波の動きがミリ単位で認識できる。ギャラリー一人ひとりの動きのすべてが分かる。球磨さんのアホ毛の揺れ……電さんの緊張……集積地さんの胸の高鳴り……すべてが手に取るように感じられる。

「よぉ。調子どお?」
「業務が早く終わったので。様子を見に来ました」

 提督と大淀さんがギャラリーに合流した事を感じた。直接の姿ではなく、二人が来たことによる空気の動きでそれが分かった。天龍さんが生唾を飲み込んだ。緊張しているようだ。鳳翔さんの優しい眼差しが皮膚に暖かく、胸に心地いい。

 戦闘機の中の妖精さんが見えた。妖精さんは私と同じく、子鬼さんをまっすぐに捉えていた。妖精さんの飛行ラインを認識する。自分が今捉えた戦闘機の軌道を、自分が放つ射線と重ねる。私は今、妖精さんの気持ちを捉えた。

 子鬼さんを認識した。子鬼さんは今、私と妖精さんをまっすぐにじっと見つめ、私が戦闘機を放つタイミングを待ち構えている。私は意識下で矢を放つ。意識下の子鬼さんが駆け始める。矢が戦闘機に変わる。子鬼さんの手が戦闘機のタラップを掴み……足をかける。戦闘機が高度を上げる……私は今、子鬼さんの心を捉えた。

「……捉えた」

 私と妖精さん、そして子鬼さんが作り上げる射線が見えた。私はこの時、確実に世界のすべてを捉えた。これこそが私がいる世界。私が子鬼さんに見せたい、私達の美しい世界。

「……ッ!!」

 矢を放つ。子鬼さんがスタートしたのを感じた。矢が戦闘機に変わり、子鬼さんに向かって飛翔する。必死に戦闘機と並走する子鬼さんはやがて、戦闘機から垂らされたタラップを掴んだ。

「そのまま!!」
「足をかけるクマーッ!!
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