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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百九十九話 フェザーン進駐
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しろ機能にしろ、集中すればするほど小さな部分を制することで全体を支配できます。かつてキリスト教は最高権力者を宗教的に帰依させることで古代ローマ帝国を支配する事に成功しました」
『もう一度それを実現させると言うのか』
「或いは統一後、帝国の中枢部を暗殺し統治力を低下させる事で全宇宙に混乱を起します。その上で国家ではなく宗教に人々の心を向けさせる……」
『なるほど、それもあるか……』
「……」
『同盟が攻め込んだ後、汝はどうする』
「地下にもぐり、猊下の御指示をお待ちいたします」
『……帝国、同盟の両国に我等の手のものを潜ませておるな? その組織化と資金調達は汝らフェザーンの者に任せておったはずだが……』
「手抜かりはありませぬ」
『……良かろう、汝の考えを採ろう』
「はっ」
『ルビンスキー』
「は……?」
『裏切るなよ』
「!」
通信を終え部屋を出るとそのままテラスに行き星空を見上げた。地球への通信を終えた後はいつも此処に来る。星空を見ることであの部屋で感じた閉塞感を払い落とす。
自分を偽るのは楽な事ではない。そして心まで偽り続けるのはさらに容易なことではない。あの部屋では自分の心を殺し、奴隷にならなければならない。何と不便な事か……。
切り抜けた……。あそこで長老会議を開く事が決まれば、罷免される事が決まれば、俺に待っているのは死以外あるまい。帝国は俺の身柄を要求している。あの老人達にしてみれば俺が帝国に寝返るのではないかと不安だろう。万一地球教の秘密が漏れれば……、その不安が俺が生きている事を許すまい。
残念だったな、トリューニヒト。お前達の手は悪くなかった。だがお前達は肝心な事が分かっていなかった。フェザーンは自由かつ不羈のフェザーン人達のものではないのだ。長老会議など人々の目を欺くための茶番でしかない。
尊大にして傲慢、陰気にして偏執を感じさせるあの老人……地球教の総大主教。あの老人こそがこのフェザーンの真の支配者だ。俺はその下僕でしかない。
「地球か……」
思わず言葉が出た。人類発祥の地、にもかかわらずその尊大さによってシリウス戦役で完膚なきまでに叩き潰され見捨てられた惑星。僅かな遺跡と汚染され永遠に肥沃さを失った大地がすべての惑星だ。かつての豊かさは何処にも無く荒廃、貧困しかない……。それは精神面でも同様だ、地球教という宗教に支配される祭政一致の惑星。自由、闊達さなど何処にも無い……。
銀河連邦もそして銀河帝国を創立したルドルフも地球を無視した。無力で何の価値も無かった所為も有るだろう、だが地球が己の覇権のために他者を踏みにじった姿に嫌悪したと言うことも有るだろう。自業自得、そんな想いではなかったか……。
八百年の長い期間、地球は無視されてきた。その間
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