巻ノ六十四 大名その十一
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「大坂まですぐに向かう」
「土産ものも持ち」
「そうして」
「土産ものは既に用意してある」
それはというのだ。
「だからな」
「すぐにですな」
「発ちますか」
「そうするとしよう、船を使えば一日じゃ」
都から大坂までというのだ。
「しかしな」
「忍の足ならば」
「その足も」
「半日で済む」
ここでこうも言ったのだった。
「ではよいな」
「では忍の術を使い」
「真田家の忍道を通ってですな」
「大坂にすぐに向かい」
「ことの真偽を確かめますか」
「義父上ともお話してな」
大谷ともというのだ。
「そして治部殿にもな」
「石田殿にも」
「会われますか」
「その為に土産も持ち」
「行かれるのですな」
「そうじゃ、とはいっても治部殿は質素な方」
石田はこのことでも知られている、権勢は持っているが贅沢は一切せずそして己の懐を肥やすこともしないのだ。
「土産はな」
「受け取られぬ」
「挨拶としても」
「そうした方じゃ、しかし持っては行く」
それでもというのだ。
「それでは行くぞ」
「わかり申した」
「それでは」
「皆発つ用意をせよ」
十勇士達にあらためて告げた。
「よいな」
「わかり申した」
「さすれば」
十勇士達も応えてだった、そのうえで。
一行はすぐに屋敷を発った、幸村はこの時に彼を助け屋敷に詰めている老家老に対してこうしたことを言った。
「少し大坂まで行って来る」
「あのことを調べてこられますか」
「拙者自身の目と耳でな」
「すぐに帰られますか」
「行きに半日、大坂に一日、帰りに半日じゃ」
「合わせて二日ですか」
「それだけで戻る」
「わかり申した、では」
家老も幸村に確かな顔で応えた。
「行かれて下さい」
「留守は任せた」
「さすれば」
家老も応えてだ、そしてだった。
幸村は十勇士と共に真田家の者達だけが知っている忍道を通りそのうえで大坂に向かった。実際に大坂に来たのは。
「いや、半日のつもりでしたが」
「半日もかかりませんでしたな]
「それだけ足が速くなった」
「我等がでしょうか」
「うむ、影走りの術がな」
忍独特のこの術がとだ、幸村も十勇士達に大坂を前にして言った。一行は既に忍装束からそれぞれの普段の身なりになっている。
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