巻ノ六十四 大名その八
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「そうしてくれるか」
「はい、それでは」
「その様にさせて頂きます」
「是非共」
「そうさせて頂きます」
「ではな」
幸村は十勇士達に微笑んだまま応えた、こうして彼は妻に十勇士達も連れて上洛することになった。だが。
上洛を間近に控えた夜にだ、彼は十勇士達と共に夜空を見つつ酒を楽しんでいた。塩に月それに星達が肴だった。
その星を見ているとだ、不意にだった。
一つの星が落ちまた別の星が落ちてだった。もう一つ落ちた。
三つの星が落ちたのを見てだ、幸村は暗い顔で言った。
「将星が落ちた、そして他に二つもな」
「将星が落ちたということは」
「まさか」
「何かありましたか」
「どなたかが倒れましたか」
「うむ」
その通りだとだ、幸村は十勇士達に答えた。
「これはな」
「左様ですか」
「それではですか」
「どなたかが亡くなられる」
「近いうちに」
「そうなると出た」
星の動きでというのだ。
「それも大きな将星であった」
「我等星の動きは殿程詳しくないですが」
「殿にはおわかりになられましたか」
「星の動きが」
「左様ですか」
「さて、天下はどうなる」
幸村は怪訝な顔でこうも言った。
「どなたかが倒れられるか」
「それ次第で、ですな」
「変わりますか」
「うむ、それでじゃが」
幸村は話題を変えた、今度の話題はというと。
「羽柴家と呼んでおるが」
「そうですな、既にです」
「豊臣家に名前が変わっています」
「羽柴家ではなく」
「皇室から授かっていますな」
「そうなっておる」
五年も前からだ、だがまだ多くの者が羽柴家と読んでいるのだ。それは幸村達もどうしてもそうしているのである。
「以前からな、じゃが」
「どうしてもですな」
「羽柴家と言ってしまいますな」
「考えてもしまいます」
「その頃が長かったですし」
「うむ、しかし完全に天下人にもなられたし」
それでというのだ。
「これよりはな」
「豊臣家と、ですな」
「お呼びする」
「羽柴家ではなく」
「そうお呼びすべきですな」
「そう思う、ではその様にいていこうぞ」
こう十勇士達に話した、そしてだった。
幸村は上洛の用意を整えていった、それを進めてだった。
遂に上洛の時になりだ、見送りに来た昌幸と信之に言った。
「ではこれより」
「達者でな」
「文は送る様にな」
二人は微笑み幸村に述べた。
「都でも責務に励むがいい」
「そちらでも確かにな」
「そうしていきます、それでなのですが」
ここでまた言った幸村だった。
「近頃上方で何かあったとか」
「うむ、どうやらじゃ」
昌幸が答えた。
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