10. あなたと空を駆け抜けたくて(前) 〜赤城〜
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鬼がどうかしたか?」
「いや、あの……子鬼さん、ジッと戦闘機を見ていますから……」
「? あ、ホントだ」
「子鬼さんは戦闘機が好きなのです?」
私は集積地さんや天龍さんと違い、子鬼さんとは意思疎通は出来ない。子鬼さんたちが何を考えているのかは、集積地さんを介さないとまだまだ理解することが出来ない。
でも今の子鬼さんは、なんとなく電さんが言ったこととは違う気持ちで戦闘機を見ているんじゃないだろうか……なんとなく、そんな気がした。なぜなら。
「……」
「……子鬼さん?」
「……」
なぜなら子鬼さんのそのつぶらな瞳には、鳳翔さんの戦闘機が映っていたからだった。
「集積地さん」
「うん?」
「子鬼さんは……何を思って、そんなに熱心に戦闘機を見ているんでしょうか」
「……わからん。でも」
「でも?」
「あの戦闘機が、この子の心を奪ったのは確かなようだ」
改めて子鬼さんを見る。さっきまであんなに賑やかだった子鬼さんが、瞳に戦闘機を映して一心に眺めていた。その姿は、まだここに来たばかりで右も左もわからない頃の私を思い出させた。
『うわー……鳳翔さんの戦闘機の飛び方、キレイですねー……』
『ふふ……ありがとうございます。でもいずれ、あなたも出来るようになりますよ』
『ホントですか!?』
『ええ。そのためにもがんばりましょうね』
『はい!』
『まずは基本からですね。自分の周囲のすべてを捉えるところから……』
私から見た子鬼さんの瞳はきっと、鳳翔さんから見たあの時の私の瞳と同じだったのだろう。それが今、同じものに心を奪われた者として直感で感じ取れた。
「子鬼さん!」
「?」
「アカギ?」
胸が疼いた。私と同じ気持ちを抱いたはずのこの子に、私と同じ喜びを伝えたくなった。気がついた時、私は身を乗り出して私の向かいに座っている集積地さんと、その膝にちょこんと座る子鬼さんに顔を思いっきり近づけ、子鬼さんを必死に誘っていた。
「戦闘機と一緒に飛んでみませんか?」
「赤城さん? どうしたのです?」
「おいおい姐さん。こいつは空飛べねーぞ?」
「アカギ、気持ちは嬉しいが……どうやるんだ?」
「私は子鬼さんと話してるんですっ! どうですか? やってみませんか?」
「……」
「よかったらぜひ!」
「……キャァァア!!」
相変わらず言葉は分からない。子鬼さんがどんな言葉を発しているか、私には知る由もない。だけどなんとなく分かった。子鬼さんは私の誘いに乗ってくれたようだ。そのつぶらな瞳には大空を飛んでいる艦載機と一緒に、必死に子鬼さんを誘い出す私の顔が映っていた。
「決まりですね」
「ぇえ!? じゃあ今日の演習どうすんだ!?」
「今日一日ぐらいはいいでしょう
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