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テキはトモダチ
10. あなたと空を駆け抜けたくて(前) 〜赤城〜
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じる。うん。稽古中に感じた香りの通りの味だ。

 私が朝食でもぞもぞと動いているからだろうか。子鬼さんが私の肩から降り、テーブルの上にちょこんと座った。行儀が悪いと思って注意しようとしたが、その前に球磨さんが『テーブルの上に乗るのはやめるクマっ。座るなら赤城か球磨の膝に来るクマ』と球磨型軽巡洋艦の長女の威厳で注意していたため、私は気にせずご飯を口に運ぶことに専念する。子鬼さんは別段ショックも受けずに『キャッキャッ』とはしゃぎながら球磨さんの膝の上にちょこんと座っていた。

「子鬼は何も食べないクマ?」
「キヤァァアアアア」
「何言ってるかクマにはさっぱりわかんないクマ……」
「食べたければ私の朝ごはんをつまめばいいかなと思いまして」
「なら準備しなくていいクマね。球磨のも食べていいクマよ?」
「フフ……コワイカ?」
「怖くはないクマねぇ」
「ガーン……」

 球磨さんの面倒見の良さに感心しつつ、銀だらの粕漬けを口に頬張る。粕漬け独特の味が口いっぱいに広がり、私の食欲にさらに火をつけた。やっぱりお櫃ごと持ってきた方が良かったかなぁ……。この調子で行くとお味噌汁もすぐおかわりに行かなきゃ。

「赤城」
「はい?」
「ちょっと控えるクマ。提督の胃が捻り切れてしまうクマ」
「なぜ?」

 球磨さんからの意味不明な制止は気にせずお味噌汁のお代わりに向かい、ついでにお櫃ももらってきた私は、子鬼さんと球磨さんの姉弟のようなやりとりを見ながらご飯をよそった。子鬼さんは球磨さんのアホ毛に興味深々なようで、ゆらゆらと揺れるアホ毛を捕まえるのに必死だ。球磨さんもわざわざ自分のアホ毛を子鬼さんの目の前に垂らして、子鬼さんの相手をしてあげている。

「球磨のアホ毛が〜捕まえられるクマ〜?」
「キヤァアアアア」
「なんだか姉弟みたいですねぇ」
「そうクマ?」
「はい」
「フフ……コワイカ?」
「天龍と姉弟になった覚えはないクマ」

 そんな調子で、私たちは談笑しながら朝食を進めた。私が3杯目のお櫃を空にした頃、球磨さんはすでに食べ終わり、お茶をすすりながら子鬼さんの相手をしていた。

「ああ、そういえば球磨さん。今日もまた演習を行おうかと思いまして」
「いいクマね。出撃はないけどその分ガンガン演習やってるから、今は練度も上がりまくりだクマっ」
「今日もこの前みたいに、チーム戦で演習をしてみようかなと思ってます。私と鳳翔さん、天龍さんと球磨さんと青葉さんのチームで」
「青葉は無理クマ。なんでも提督からしばらくの間、別の任務を任されたらしいクマ」

 初耳だ。そういえば一昨日から青葉さんの姿を見ていない。偶然会わなかったんだと思ったのだが……任務中なのか。それにしても個別に任される任務だなんて、一体何なんだろう。

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