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仮面ライダーAP
第三章 エリュシオンの織姫
第9話 人類の挑戦
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語り継がせるための、羽柴柳司郎の命を懸けた計画だった。

 ――改造人間は人類を超越した選ばれし者であり、下等な人間の生殺与奪を左右する権限がある。その者達には持って然るべき地位があり、それを捨てて人間の軍門に下ることは断じて許されない。
 それが、末期のシェードに蔓延していた優生思想。その扇動者だった羽柴は、この思想に基づいて最期まで戦い続けていたのだ。

「羽柴柳司郎の優生思想は、決して許されるものではない。……だが、一つの真理ではあるのかも知れん」
「だから誰に許される必要もない地位を、官軍だった頃のシェードに求めていたのかも知れません。――ですが、我々人間には理性というものがある。人間の『体』と『心』を捨てた改造人間にはない、人としての矜恃が」
「心……か」

 ロビンの言葉に、番場総監は目を伏せる。政府の圧力に屈するまま愛する娘を見捨てかけていた彼にとっては、何とも耳の痛い単語だった。

「我々は、彼に試されているのです。人間の心が、どれほど理性を保てるかを。……この戦いを生き延びた我々には、その試練を制して彼の思想を否定する義務があります」
「君は……出来ると信じるか?」
「信じます。実例なら、ありますから」
「実例……仮面ライダー、か」

 仮面ライダー。改造人間でありながら人間の「心」を捨てず、その苦悩を仮面に隠して戦い抜いた戦士。
 その名を感慨深げに呟く番場総監の脳裏には、ある青年の勇ましい横顔が過ぎっていた。

「彼らは人の体を捨てた……否、奪われた。しかしそれでも、人の心を失うことはなかった。人体の変調が精神に齎す影響は大きい。にも拘らず彼らはその影響に屈することなく、半人半獣の怪人達と戦い抜いて見せた。彼らは人間として、その心の強さを我々に証明してくれた、生き証人です」
「……」
「彼らのような人間がいるなら……私も、それに懸けて戦います。――魂くらいは、共にありたいから」

 胸に拳を当て、己に言い聞かせるようにロビンは厳かに呟く。彼が自嘲するような笑みを漏らしたのは、その直後だった。

「……魂、か」
「ふふ。尤も、この言葉は現FBI副長官の受け売りですがね」
滝和也(たきかずや)副長官か……あの人らしい言葉だな。……わかった。ならば、私も賭けてみよう。人類のため、などというお題目で全てを奪われた彼への、せめてもの罪滅ぼしだ」
「ありがとうございます。……遠回りではありますが、ようやくこの世界も前を向けるようになるでしょう」

 ――羽柴柳司郎が掲げた、優生思想。
 その理性を捨てた人面獣心の思想に対する人類の挑戦は、未だに続いている。

 事件の後、ICPOの捜査で「12月計画」が明るみに出たことにより、当時の内閣は激しく世論に責任を問われ総辞職を余儀無くさ
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