第三章 エリュシオンの織姫
第8話 青空になるまで
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その旅で、何を得たのか。何を掴んだというのか。
今となっては、それを問い掛けることもできない。
瞳孔の開いた眼で、この世界の空を仰ぐ老兵は、何一つ語らず眠る。その表情は、どこか安らいでいるようにも伺えた。
「……」
男は片膝を着くと、そっと手を乗せて老兵の瞼を閉じさせる。
死んでしまえば、敵も味方もない。それだけが、彼に残されたただ一つの真理であり、正義だった。
(……俺は、生きる。まだ、何が正しいのかも、わからないままだから)
男は立ち上がり、空を仰ぎ続ける。激しく雨に打たれても、その雫を拭うこともなく。
どれほど水を浴びたところで、己の罪は洗い流せぬことを知りながら。それでも彼は、この雲が晴れるまで。
――荒れ果てたこの世界の果てに、虹が差し掛かる、その時まで。
青空になるこの世界を、見つめ続けていた。
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