第三章 エリュシオンの織姫
第8話 青空になるまで
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ない「過ち」を繰り返した今からでも、せめて――その人の幸せだけは叶うように。
◆
――2016年12月12日。
東京都稲城市風田改造被験者保護施設跡。
二人の剣士による剣戟は膠着状態となり、サダトも羽柴も互いに決定打を与えられずにいた。
「……計画外の戦闘だというのに、つい熱が入ってしまうな。どこまでも昂らせる男だ、お前は」
「……言っておくが。俺はこれ以上、貴様の計画とやらに付き合うつもりはない。――終わらせるぞ」
「あぁ。――年寄りには、その方が有難い」
だが、もう戦いがこれ以上長引くことはない。
サダトと羽柴は、ベルトに装填されたボトルと酒瓶を同時に押し込み――そこから高まるエネルギーの奔流を、自分の得物に集中させていく。
サダトが逆手に構えたGXキャリバーは、その奔流を浴びて紅い電光を放ち。羽柴が水平に構えた改進刀が、金色の電光を纏う。
『FINISHER! LET'S GO RIDER BEAT!』
『驍勇無双、旭日昇天、気剣体一致!』
互いの電子音声が、必殺技の発動を告げ――双方は電光を纏う剣を翳し、雄叫びと共に走り出す。
全てに今、決着を付けるために。
「スワリングッ! ハイパァアァアッ、ビィィィイィトッ!」
「劒徳正世――桜花! 赤心斬ッ!」
横一文字の一刀。逆手持ちの大剣。
双方の剣が、電光を迸らせ――激突する。
轟音と衝撃波が嵐の如く吹き荒れ、火の海さえかき消していく。
タイガーサイクロン号の残骸までもが横転し、大地が剥がれ、草木が吹き飛ぶ。
彼らという存在そのものが、嵐となっていた。
「おぉおぉおぉおぉおッ!」
「ぬ――あぁあぁあぁああッ!」
叫びが。魂からの叫びが、雲を衝き天を貫く。
地を揺らし。
風を巻き起こし。
命を燃やす彼らの絶叫が、神々の怒りの如くこの世界に轟いていた。
その命が――燃え尽きる、その瞬間まで。
◆
――それから、どれほどの時が経つだろう。
何もかもが吹き飛び、施設の跡らしき鉄骨だけが残った荒地。その中央に立つ、ただ一人の男は――足元で朽ち果てた老兵を、どこか憐れみを孕んだ眼差しで見下ろしていた。
「……」
その老兵の、墓標代わりか。
男は手にした大剣を、体重を預けるように大地へ突き刺す。暗雲から降り注ぐ豪雨は、そんな彼らの全身を絶えず濡らしていた。
『長い――旅だった』
それが、老兵が男に残した、最期の言葉だった。それはどんな旅だったのか。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ