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仮面ライダーAP
第三章 エリュシオンの織姫
第8話 青空になるまで
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ない「過ち」を繰り返した今からでも、せめて――その人の幸せだけは叶うように。

 ◆

 ――2016年12月12日。
 東京都稲城市風田改造被験者保護施設跡。

 二人の剣士による剣戟は膠着状態となり、サダトも羽柴も互いに決定打を与えられずにいた。

「……計画外の戦闘だというのに、つい熱が入ってしまうな。どこまでも昂らせる男だ、お前は」
「……言っておくが。俺はこれ以上、貴様の計画とやらに付き合うつもりはない。――終わらせるぞ」
「あぁ。――年寄りには、その方が有難い」

 だが、もう戦いがこれ以上長引くことはない。

 サダトと羽柴は、ベルトに装填されたボトルと酒瓶を同時に押し込み――そこから高まるエネルギーの奔流を、自分の得物に集中させていく。

 サダトが逆手に構えたGXキャリバーは、その奔流を浴びて紅い電光を放ち。羽柴が水平に構えた改進刀が、金色の電光を纏う。

『FINISHER! LET'S GO RIDER BEAT!』

驍勇無双(ギョウユウムソウ)旭日昇天(キョクジツショウテン)気剣体一致(キケンタイイッチ)!』

 互いの電子音声が、必殺技の発動を告げ――双方は電光を纏う剣を翳し、雄叫びと共に走り出す。

 全てに今、決着を付けるために。

「スワリングッ! ハイパァアァアッ、ビィィィイィトッ!」

劒徳正世(けんとくよをただす)――桜花(おうか)! 赤心斬(せきしんざん)ッ!」

 横一文字の一刀。逆手持ちの大剣。

 双方の剣が、電光を迸らせ――激突する。

 轟音と衝撃波が嵐の如く吹き荒れ、火の海さえかき消していく。

 タイガーサイクロン号の残骸までもが横転し、大地が剥がれ、草木が吹き飛ぶ。

 彼らという存在そのものが、嵐となっていた。

「おぉおぉおぉおぉおッ!」

「ぬ――あぁあぁあぁああッ!」

 叫びが。魂からの叫びが、雲を衝き天を貫く。

 地を揺らし。

 風を巻き起こし。

 命を燃やす彼らの絶叫が、神々の怒りの如くこの世界に轟いていた。

 その命が――燃え尽きる、その瞬間まで。

 ◆

 ――それから、どれほどの時が経つだろう。

 何もかもが吹き飛び、施設の跡らしき鉄骨だけが残った荒地。その中央に立つ、ただ一人の男は――足元で朽ち果てた老兵を、どこか憐れみを孕んだ眼差しで見下ろしていた。

「……」

 その老兵の、墓標代わりか。

 男は手にした大剣を、体重を預けるように大地へ突き刺す。暗雲から降り注ぐ豪雨は、そんな彼らの全身を絶えず濡らしていた。

『長い――旅だった』

 それが、老兵が男に残した、最期の言葉だった。それはどんな旅だったのか。
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