第三章 エリュシオンの織姫
第5話 促された覚醒
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…!?」
そして、彼が目を向けた先――フラッシュの中から。
仮面ライダーとして戦うと決めたあの日に別れで約半年、会うことなど叶わないままだった、あの異星人の姫君が――溢れる涙を堪えることすら忘れて、こちらへ駆け寄ってきた。
涙を流しながら、歓喜の笑みを浮かべる、その笑顔。それは間違いなく、サダトは人間に戻る道を絶ってでも護ろうとした少女。
アウラ・アムール・エリュシオンだった。
◆
――2016年12月10日。
東京都千代田区国会議事堂。
真紅のカーペットを敷く、整然とした廊下を歩く二人の男。
初老に差し掛かった彼らの一人は、歳を感じさせない筋肉質な体格の持ち主であり、傍らを歩く小太りの男とは比にならない背丈だ。
「議員。警視庁の番場総監が、例の保護施設の件で行動を起こしています。――噂では、あなたが手引きしているとの情報も」
「そうか。ま、言いたい奴には言わせておけ」
脂汗を滴らせる小太りの男に対し、長身の男は涼しい表情で堂々とカーペットの上を歩んでいる。
心配するようなことは何もない、と言いたげな彼だが、小太りの男の顔色は優れない。
「ここで本件との関係を明確に否定しなくては、内閣から報復人事を受ける可能性があります。ただでさえ、あなたは現内閣の政敵なのですから」
「政敵……政敵、か。ま、確かに俺は敵だろうよ。国民を私欲で切り捨てる手合いと仲良しごっこをやれるほど、俺は器用じゃねぇからな」
「そんな悠長なことを仰っている場合ではありませんぞ」
まくし立てる小太りの男に対し、長身の男は飄々と薄ら笑いを浮かべる。そんな部下の反応も含めて、楽しんでいるかのような笑いだ。
「何をそんなに焦ってる。番場の奴は、パトロールの延長で捜査一課をうろちょろさせてるだけだろうが。直接、施設に警護のための人員を配置させたわけじゃない。あいつは閣僚に逆らっちゃいないさ」
「確かに形式上、施設周辺に警護の任務に就いた警官隊がいるわけではありません。ですが、内閣はいくらでもこじつけるでしょう。必ず番場総監は責任を問われます。その時に、背後にあなたまでいると知られては……」
小太りの男は余裕を崩さない上司に、なおも言い募る。だが彼はその表情のまま、視線を外して穏やかな眼差しで、ここではない遠いどこかを見つめていた。
「ICPOもその件の裏を嗅ぎつけてる。今に報復の心配なんてなくなるだろうよ、当の内閣が悪事をバラされ空中分解するんだからな」
「その前にあなたが政界から追放されては、元も子もありません。現内閣の崩壊が先かあなたの失脚が先か……賭けにしてもリスクが高過ぎます」
長身の男はあくまで自分の身を案じて、諫言を繰り返す部下を見つめる。その表情は――自
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